国連食糧農業機関(FAO)は、2050年までに100億人に増加すると予想される人口に対応するため、食料生産を70%増やす必要があると予測している。しかし単に農業を拡大させるだけでは、環境への負荷を増大させるだけだ。
そこで米国カリフォルニア州のスタートアップAir Proteinは、私たちが吐き出す「空気」をつかって代替肉を開発した。土地はもちろん、水や天候の要件なしにタンパク質を生産でき、大豆などの従来の製造プロセスに比べて必要な土地と水は1000分の1のみである。また農薬やホルモン、抗生物質など使わず数日で栄養を生み出せるという画期的な技術だ。
タンパク質を生成するこのプロセスでは、NASAの長距離宇宙ミッションに向けた技術にインスピレーションを受けた「カーボン・トランスフォーメーション・テクノロジー」を使用。空気中のCO2を水やミネラル栄養素と合わせ、再生可能エネルギーと菌を用いて動物性タンパク質と同じアミノ酸構成のタンパク質をつくりだす。そして粉末状のタンパク質からつくられた代替肉には、ヴィーガン食では欠乏しがちな重要なビタミンB12も含まれる。
Air ProteinのCEOリサ・ダイソン博士は「アマゾンの森林破壊や干ばつ等、現在の資源が逼迫しているのは統計で明らか。土地や水資源への依存を減らして、より多くの食料を生産する必要がある。世界では植物ベースの肉が導入されているが、空気ベースの肉は、天然資源に負担をかけることなく、人口増加への対応策として機能する。これは、持続可能な生産の次なる進化だ」と述べる。
世界でも他に類を見ない、空気から代替肉を作り出す技術。将来の食料生産へのアプローチに革命をもたらすことが期待できそうだ。
【参照サイト】Air Protein