コーヒー豆農家と消費者をつなぐブロックチェーンアプリ「Thank My Farmer」

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様々な国から輸入され、スーパーに陳列された品々や、コンビニに所狭しと並ぶ食料品。グローバル化とテクノロジーの発展は私たちの生活を飛躍的に便利にし、私たちは日本にいながらにして世界中のものに簡単にアクセスできるようになった。大規模な物流のその裏で、商品は数えきれないほどの人の手を介して私たちのところに届いている。

その行程の多さ故に情報は煩雑になり、一体誰がこの商品を手元まで運んでくれたのか、生産者は誰か、この商品の生産環境はどうだったのか、安全なのかといった重要な情報を知ることが、極めて難しい状況にある。今回紹介するアプリは、そんな状況を一気に変革するものだ。

Thank My Farmer”は、スイスを拠点に活動するFarmer Connect社がIBM社のブロックチェーン技術を活用して作った、消費者とコーヒー豆の生産者をつなげるアプリだ。消費者からの生産過程への透明性の要求に応えつつ、それまでは同じ供給プロセスにありながらも、次の業者へ届けるまでしか使わなかった製品情報をブロックチェーン技術で繋げ、業者間でシェアし、複雑で断片的だった情報を一本化することに成功した。

アプリ内では、今飲んでいるコーヒーのコーヒー豆がどこの農園からやってきて、自分のいるコーヒー店に届くまでに至ったのか、それに関連する業者や地図データを見ることができる。また、生産者IDを供給プロセスにつなげることで、生産者の身元や収入を裏付け、IDに記録された情報は生産者が会社や店を立ち上げる際にローンを組むための信用を作る手助けにもなる。アプリを使用する消費者は、商品のQRコードをスキャンすることで、製品がどう作られたかのストーリーも見ることができる。今後開発が進めば、生産者コミュニティの持続可能なプロジェクトを応援する定額コースを作る予定であると、Farmer Connect社は発表している。

IBM社のフード・トラスト部門ジェネラル・マネージャーのラオ氏は、今回のFarmer Connect社のアプリは現実世界をブロックチェーン技術を使って変化させていく素晴らしい運用例であり、食料生産過程への応用は商品への信頼と透明性を担保する効率的な方法だと述べている。“Thank My Farmer”アプリは2020年初頭にアメリカ、カナダ、ヨーロッパでローンチ予定だ。

コーヒーの消費量は毎年増加し、生産量を追い越す勢いだ。しかし、その生産者の労働環境は劣悪で、非人道的な条件で働かされている人々も多数存在している。私たちは、日々何気なく消費しているコーヒーを通して、知らず知らずのうちにそのような搾取に加担しているかもしれない。今後、ブロックチェーン技術は我々が今まで見えなかった世界の裏側を明らかにしていくことだろう。

【参照サイト】Thank My Farmer
【参照サイト】Farmer Connect
【参照サイト】From bean to the brew on the blockchain
【関連記事】顧客は地球。IBMに学ぶ社会課題とテクノロジーの幸せな関係。

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