組み立ても壊すのも簡単。サーキュラーエコノミーを実現する「ハチの巣」型住宅

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自然の営みは、時に人が生きていくための知恵を授けてくれる。今回はそんな事例をご紹介したい。

英ロンドンの建築スタジオGianluca Santosuosso Designが、王立英国建築家協会(RIBA)のデザインコンペティションの一環として「The HIVE Project」の構造を提案している。HIVE(ハイヴ)とは「Human-Inclusive & Vertical Ecosystem(人の包摂と垂直生態系)」の頭文字をとったものだ。

HIVEは、「ハチの巣」からインスピレーションを受けたハニカム構造(六角形)の住宅・共有施設である。ミツバチが巣をつくるように綿密に、耐久性を持って作られ、居住者のライフステージにあわせて柔軟に家をカスタマイズできるようになっている。

Hiveプロジェクト

Image via Gianluca Santosuosso Design

たとえば住宅の他に共有キッチン、静かに仕事をするプライベートルーム、遊び場、プール…… そして純粋に巨大なハチの巣として使うことも可能だ。住民が増えコミュニティが拡大したときでも、建てた土地への影響を最小限に抑えながら、より多くのモジュールをすばやく追加できる。

Hiveプロジェクト

Image via Gianluca Santosuosso Design

従来の建築であれば、増改築は大規模なもので、騒音やホコリなど連日の工事が住民へのストレスになることもあった。しかしこのHIVEでは、事前に組み立てられたモジュールを再び組み合わせるだけなので、気がついたら部屋が増えていたというほど、楽に増築できる。ニーズに従って部屋数を増やしたり減らしたりできるため、多くの地方部の課題である「空き家」ができない仕組みをつくることも可能だ。

また、このプロジェクトは、オンサイトでの食料づくり、エネルギーづくりを含むサーキュラー・エコノミー(循環型経済)のスキームを作り、土地の生態系や自然の再生を促進していることも特徴的だ。廃水はリサイクルし、電力も太陽光などの再生可能エネルギーを利用して自給自足できるよう設計されている。断熱効果も高いため、夏や冬でも低エネルギーで生活できる仕組みもある。

建物を解体するときも簡単だ。生分解性の建設資材は処分が簡単で、新しい建物にリサイクルすることもできる。建てる前から、「壊すとき」のことも配慮されて作られているというわけだ。

Gianluca Santosuosso Designは公式サイトで「HIVEは、ハチの巣の特性という、自然と人間のクリエイティビティを融合する新たな生活空間プロジェクトです。共有の施設を提供し、個人、家族、コミュニティが自給自足できるようにして、自治体や行政の公共投資の必要性を最小限にします。このキットを使用することで、開発がユニークで多様になるでしょう」と説明している。

ミツバチは、最小限のミツロウから快適で働きやすい巣をつくる。そこから学びを受けたThe HIVE Projectは、サーキュラーエコノミーや生態系の保護など、私たちが考慮すべき新たな生活環境を実現している未来の住宅といえるだろう。

【参照サイト】Gianluca Santosuosso Design
【関連ページ】バイオミミクリーとは・意味


プロジェクト関連チーム

  • Gianluca Santosuosso (Gianluca Santosuosso Design – Architecture)
  • Eri Pontikopoulou (EPDS – Architecture)
  • Roman Pomazan (Urban Sustain Architects – Urban Planning)
  • Shrikant Sharma and Becky Hayward (Buro Happold – Analytics)
  • Davide Frati (Sustainability Consultant)
  • Loris a. di Benedetto (Architecture)
  • Richard Holmes (Community Development Consultant)
  • Sergiy Kovalenko (Hempire Ltd – Hemp Construction Consultant)
  • Marco Crippa (Marlegno s.r.l. – Prefabricated Timber structures Consultant)



Edited by Kimika Tonuma

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