原料不足をチャンスに。三島食品のパッケージ変更に学ぶ「正直な会社経営」

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お好み焼きや焼きそばにパラリとかける青のり。青のりから広がる磯の香りに食欲をそそられるという方も多いのではないだろうか。そんな日本のごはんの名脇役、青のりに異変が起きている。

1971年から『青のり』を販売してきた三島食品が2020年7月、原材料の変更を理由に、パッケージを青色から黄緑に、商品名を『青のり』から『あおのり』に変更したことがSNS上で話題になった。

左が変更前の『青のり』、右が変更後の『あおのり』

左が変更前の『青のり』、右が変更後の『あおのり』

『青のり』に使われているのは、青のりの中でも香りが強く鮮やかな色が特徴のすじ青のりだ。すじ青のりは海水と淡水が交わる汽水域に生息し、吉野川流域など四国を主な産地としている。しかし近年、気候変動による海水温の上昇や護岸工事による水中の栄養不足により収穫量は年々激減。生産量の多かった2015年と比較すると2019年は10分の1しか採れず、平均落札価格は約5.5倍にも上昇。高級肉並の価格になった。

そこで今回、止むなく原材料をポテトチップスなどのお菓子に使われている、ひら青のりとうすば青のりに変更し、さらにパッケージの色や商品名の変更も行ったというわけだ。パッケージなどの変更は、商品の認知度に影響する可能性もあり、慎重な判断が求められる。青のりに種類があるとはいえ、素人にはその違いはなかなか分かりにくい。なぜパッケージ変更をしてまで原材料の変更を消費者に伝えようとしたのだろうか。同社の広報担当、佐伯俊彦さんにお話を伺った。

変更の理由は「誤認」を防ぐため

今回のパッケージ、商品名変更の最大の目的は「消費者の誤認を防止するため」と佐伯さんは言い切る。ひら青のりとうすば青のりは、色は従来使われていたすじ青のりとさほど変わらないものの、香りについてはすじ青のりの方が上回る。ささいな違いとはいえ、これまでの『青のり』とは違う、ということを伝えなければ「誤認」になってしまう。それだけは避けたい。そんな強い思いが、今回のパッケージ・商品名変更へとつながった。

素人目だと「誤認」と言えるほどの違いがあるのか、と思ってしまうが、三島食品にとっては「ひら青のりとうすば青のりで提供する『あおのり』は、すじ青のりでつくる『青のり』とは別商品といってもいいくらい違う」認識なのだという。このこだわりは、創業以来続く素材への追求からきている。たとえば、主力製品である『ゆかり』は原材料となる赤紫蘇のタネを20年かけて独自に開発・育成し、ゆかりに適した色や香り、味わいを守ってきた。「調味料で味を調整すれば同じ味はつくれます。でもそれでは素材が活きない。私たちは素材を活かす味付けしかしない、と決めているんです。」

さらに、商品を買ってくれる人に伝わりづらいかもしれない、と新しくなった『あおのり』パッケージの裏面にはこんなメッセージが書かれている。

商品のパッケージ裏に書かれたメッセージ

商品のパッケージ裏に書かれたメッセージ

三島食品が品質に自信をもってお届けしてきたすじ青のりを伝統の青いパッケージで作る事ができなくなりました。国内産地での記録的な不漁が続いた為です。

陸上養殖をふくめ原料確保につとめていますがしばらく時間がかかりそうです。

その間、今できる精一杯の青のりを準備しました。

でも待っていてください。必ず帰ってきますから。

すじ青のりの不漁を伝えつつ、いつか再びすじ青のりを提供することを誓うメッセージ。「当たり前のものが当たり前じゃないという現状、温暖化などの影響によって、すじ青のりが採れなくなっている状況を知って欲しいと思いました。そこで、端的に現状を伝えつつ、印象に残るようラブレター風に書きました」。SNS上にはこのラブレターに応えるかのように、「待ってます!」「がんばれ三島食品!」といった投稿があふれた。

パッケージ変更に対する社内の反応とは?

大胆な展開に社内での反対はなかったのだろうか。この点について、佐伯さんは「各部署でお客様視点を共有しているので異論はありませんでした。むしろ、原材料の変更を的確に伝えるためにどうすればいいのか、というアイデア出しの方が大変でした」。反対どころか「中途半端なことをして、誤認されるようなことはしたくない」という認識だったという。

こうした判断の背景には、三島食品の創業者、三島哲男氏が掲げた行動指針があるという。行動指針の一つに「正直であること」があり、社内ではそれが徹底されている。

たとえば今回、原材料変更にともない、内容量が2.2gから2.3gと0.1g増量されている。その理由は、ひら青のりとうすば青のりは、すじ青のりよりも単価が若干安いため。「何もそこまで正直じゃなくても、と言われることもあるんですが社内ではこれが当たり前です。」

思わぬ反響に会社の結束高まる

パッケージ変更後、いつもは商品の販売場所についての質問や、クレームなどを受け付けている三島食品のお問い合わせフォームに「応援しています!」「すじ青のりが減っているとは知りませんでした。待ってます」といったメッセージが多数届いた。

しかし、こうした反応は会社からすれば「副産物」。思わぬ反響にびっくりしたという。応援のメッセージはすじ青のりの生産者にも届けられ、生産者を勇気づける機会にもなった。「ええもんつくらんと!と社が一枚岩になりました」。佐伯さんの言葉に喜びがにじむ。

編集後記

今回、なぜ原材料の変更を理由にパッケージなどを大々的に変更したのか、という点に関心があり取材を行った。その背景には、消費者に対する正直さ、素材へのこだわり、という創業以来変わらない信念があった。

会社にとっては原材料の質が若干落ちてしまうという負の事態。考え方によっては、黙って原材料を変更することもできたかもしれない。しかし、正直かつわかりやすく消費者に伝えることによって、逆に多くのネットユーザーから熱烈な支持を得る結果となった。

環境問題や新型コロナ感染症など、さまざまな要因で食の現場に異変が起きている昨今。止むなく原材料などを変更しなければいけない事態は今後増えていくだろう。そんなとき、消費者とどのようにコミュニケーションをとるべきなのか、模範となる事例といえるのではないだろうか。

現在、三島食品は、高知や広島で陸上養殖を手がけており、早ければ2021年にすじ青のり復活をめざしている。すじ青のり復活の際には三島食品からどんなメッセージが発信されるのか、今から楽しみだ。

【参照サイト】すじ青のりの陸上養殖 – 三島食品

Edited by Kimika Tonuma

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