ドイツの美術大学が「何もしない学生」に奨学金を提供する理由

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積極的に行動することは、一般的に良いことだとされている。しかしもしその行動が、他者にネガティブな影響を及ぼしているとしたら、どうだろう。

行動することによって成功と成長と金を手に入れたとしても、それが生態系の危機や社会的不平等につながっていたら、私たちの心の底には、漠然とした不安が漂うのではないだろうか。

私たちはむしろ他者への影響を抑えるために、行動を止めてもいいのではないか。このような仮説のもと、ドイツのハンブルク美術大学は「何もしない学生」3人に、それぞれ1900ドル(約20万円)の奨学金を与えるという。奨学金の申込受付は2020年8月に始まり、9月15日に締め切られた。この奨学金には、説得力のある怠惰なアイデアを持つ者なら、誰でも申し込むことができたという。

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Image via Pexels

この奨学金の申請フォームには「あなたがしたくないことは何ですか」「なぜこれをしないことが大切なのですか」「なぜあなたが、これをしないことに相応しいのですか」といった質問が並び、やらないことを決める難しさを感じる。生産性や行動力を高めることが求められがちな世の中で、あえてその逆の方向へと意識を切り替えることが求められるのだ。

奨学金を獲得する3人の名前は2020年11月5日に発表され、その3人は翌日の6日から来年5月にかけて開催されるエキシビション「The School of Inconsequentiality: Exercises for a Different Life(取るに足らないことを学ぶ:生活を変えるためのエクササイズ)」で紹介される、体験レポートを提出しなければならない。奨学金は、レポートを提出したあとに授与されるという。

同大学でデザイン論を教えるフリードリヒ・フォン・ボリース氏は、コロナ禍の体験が今回の奨学金のアイデアに結び付いたとCNNへの取材に対して述べた

「私たちはコロナ禍の中で、自分だけでなく他人を守るために忙しく過ごすことをやめました。これはとても重要なことで、ポストコロナ時代もこの姿勢で臨むことができるのではないかと思います。」

「取るに足らないこと」をテーマに掲げる同大学のエキシビションだが、ここではまさにその取るに足らなさこそが自由、平等、正義と同様に、人間と社会の望ましいあり方を支える要素なのではないかと問題提起をしている。めでたく奨学金を獲得する3人は、何もしないことを実践するロールモデルとして、私たちにいかなる気づきを促すのだろうか。

【参照サイト】 HFBK Hamburg announces three scholarships for doing nothing
【参照サイト】 A university is offering scholarships for you to do absolutely nothing

Edited by Erika Tomiyama

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