パリを代表する大通りであるシャンゼリゼ通りは、有名な観光スポットだ。しかし、この通りは近年オーバーツーリズム(観光公害)、渋滞、大気汚染といった問題を抱えている。フランスの建築設計事務所によると、片側4車線のシャンゼリゼ通りには毎時間3000台もの車が通るという。また、この通りの歩行者の68%は観光客であり、地元パリの人は5%しか歩いていないそうだ。
シャンゼリゼ通りを、観光客だけでなく地元の人も楽しめる、環境に優しい通りに作り替えることはできないか。そう考えたパリ市が2021年1月に打ち出したのが、この通り全体を2030年までに「並外れた庭園(an extraordinary garden)」に生まれ変わらせるというプランだ。計画では車線を現在の半分に減らし、その分歩道や緑の空間などを拡張することで、よりサステナブルかつ人々が気持ちよく過ごせる場所にすることを目指している。
このプロジェクトを手掛けるのは、パリを拠点に活動する建築設計事務所「PCA-STREAM」だ。プロジェクト全体は2030年に完成する予定だが、シャンゼリゼ通りの端にあるコンコルド広場の再設計は、2024年のパリオリンピックに間に合うように完成させるという。パリ市はオリンピックに向けて、エッフェル塔の周囲も緑豊かに再設計する計画を進めており、自然豊かな都市環境が形成されるのが楽しみだ。
シャンゼリゼ通りの改造計画では、食事を楽しめる様々なお店、子どもが動き回れる遊び場、「リビングルーム」と呼ばれる緑に囲まれた憩いの場などができる予定で、観光客も地元の人も惹きつける場所になりそうだ。車線が減ることで歩行者は道の反対側に渡りやすくなり、快適な空気の中で様々なサービスを利用しやすくなるだろう。
PCA-STREAMは同プロジェクトについて、twitterで「シャンゼリゼ通りは新しい都市づくりを実践し、再び輝きを放ちます」と述べている。10年後のシャンゼリゼ通りでは、美しい緑、人々のウェルビーイング、持続的成長といった要素が、互いに混じり合いながら街に溢れ出していることだろう。
【参照サイト】 PCA-STREAM
Edited by Erika Tomiyama