国境による分断をなくす。リアルタイムで都市と都市を結ぶ窓「Portal」

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リトアニアの首都ヴィリニュスと、ポーランドの都市ルブリンは、約600キロメートル離れている。バスや電車に何時間も乗らなければ行き来できない距離で、互いの言語や文化も違うため、ひとつの地球に住む人間としての一体感を持ちにくいこともあるだろう。そんな両都市では、街中に設置された大きな丸いスクリーンを通して、相手側の都市の道行く人たちを見ることができるというユニークなプロジェクトが始まっている。

この「Portal(ポータル)」と呼ばれるプロジェクトでは、その名の通り世界を知る入り口として、街にコンクリート製の丸いオブジェクトを設置する。そしてカメラとインターネットを利用し、オブジェクトの中央にあるスクリーンに互いの街の様子を映すのだ。両都市の人たちはスクリーンの前で手を振ったり踊ったり、相手と自由にコミュニケーションをとることができる。スクリーンの前をただ通り過ぎるだけでも、相手側の日常を垣間見る貴重な機会になるかもしれない。

ポータル

Image via Portal

Portalはヴィリニュス市、ルブリン市、リトアニアのベネディクタス・ギリス財団、そしてルブリンの文化団体であるCentre for Intercultural Creative Initiatives CROSSROADSによる共同プロジェクトだ。プロジェクトを発起したベネディクタス・ギリス財団は、今の時代にこういった試みが必要とされる理由について、プレスリリースで次のように語っている。

「今、私たちは社会の分断、気候変動問題、経済問題など、多くの深刻な課題を抱えています。こういった問題が起こるのは、優秀なリーダー、アクティビスト、科学者がいないからではありません。私たちの知識や技術が足りないからでもありません。問題を引き起こしているのは私たちの部族主義であり、他者への共感性の欠如です。私たちは国境により隔てられているため、見ている世界が狭いのです。」

自分の近くにいて、同じ言語を話し、価値観が似ている人と過ごすのは心地よい。その自然な感情が、何でも「自分たち」と「彼ら」にわけて考える偏狭さにつながってしまってはいないだろうか。そして「彼ら」のことをよく知らないまま怒りの矛先を向けたり、「自分たち」の中に閉じこもったりする。分断の進む世の中に、今こそ世界をつなぐ架け橋が必要なのではないか──。これが同財団の想いだ。

ヴィリニュスとルブリンをつなぐスクリーンは2021年5月下旬に設置され、8月まで置かれる予定だ。また、今後ヴィリニュスとロンドンをつないだり、アイスランドの首都であるレイキャビクとつないだりする計画もある。Portalで新しい人と出会い、相手を歓迎し、「自分たち」の境界線をどんどん広げていけたら素敵ではないだろうか。

【参照サイト】 Portal – a Bridge to The United Planet (portalcities.org)

Edited by Erika Tomiyama

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