ダイバーシティとは・意味
ダイバーシティとは?
日本語で「多様性」と訳されるダイバーシティ。組織やグループなどで多様な人材を登用し、声を取り入たり、それぞれが持つ違った能力をいかすことで、組織の競争力を高めようとする取り組みを指す。
そういうと、「うちの職場では女性が活躍しています!」や、「障害をいかした仕事の仕方を!」「マイノリティを立場を守ろう」といった声があがり、それを会社経営におけるダイバーシティだと捉える人がいる。しかしそれは、多様性の一部に過ぎない。
ここでいう多様とは、たとえば以下のようなものだ。高千穂大学高千穂学会の中村豊氏は、ダイバーシティの属性を、生まれ持ったもので変えようがない「表層的ダイバーシティ」と、ぱっと見では違いがないが、実は複雑な「深層的ダイバーシティ」の2種類に分けている。
もともとダイバーシティは、1960~1970年代のアメリカで、女性やマイノリティが差別されることなく採用され、公正な処遇を受けることを目指して広がった取り組みだった。1980年代~1990年代には、組織のリスクマネジメントとして多様性を取り入れることがグローバルで推進された。
現代におけるダイバーシティは、特定の人々を性別や人種などの生まれ持った属性でくくり、それを保護することではなく、一人ひとりが持っている違いを認め、尊重しようということなのだ。
ビジネスにおいては、インクルージョン(包括)と一緒になった「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」という概念がある。ビジネスにおけるインクルージョンとは、多様な人材が互いの違いを受け入れ、活かしあいながら、それぞれに実力を発揮できる職場のあり方を指す。
多様な人材が集まっている状態を指すダイバーシティと、その状態を発展させ、多様な人材が一体となって働いている状態を指すインクルージョン。この二つの取り組みを両立することで人材が定着し、経営上の成果を出すことにつながると考えられている。
なぜ企業にダイバーシティが必要なのか
では、そもそもなぜ多様性が大事なのか。認めるべきなのか。自分と似た人と一緒にいた方が楽なのに。とくに、「空気を読む文化」があるほど同質性の強い日本では、珍しくない本音かもしれない。
そんななか、国内でもいち早くLGBT支援宣言を掲げたり、難民支援のグローバルキャンペーンを行うなど、社内の多様性を認め、積極的に歓迎している会社のひとつが、世界的に有名なイギリス発祥の化粧品メーカーであるLUSH(ラッシュ)だ。
LUSHが他社と比べてユニークなのが、逆ピラミッド型の組織体系だ。つまり、お客さまが一番上で、その次に店舗で働くスタッフがいて、リーダー層が下で上の人たちを支えている。なので、店長の上に上司のあたるエリアマネージャーがいない。それは、スタッフ一人ひとりがオーナーシップを持ってLUSHの信念を伝えてほしいという思いからだ。この思いは、広告を打たず、店舗をハブとしている姿勢からもうかがえる。
また、同社は「Freedom of Movement」(移動の自由)という信念を掲げている。まず、個人の希望ではない人事異動はない。また、キャリアはオープンになっており、自分で空いているチャンスを見つけ、自ら手を挙げるイニシアチブが大切にされている。
そして、この「Freedom of Movement」には、物理的な場所の移動だけでなく、「他者との違い」という壁も、「自分自身の可能性」への壁も越えていくことが含まれている。
このように、会社として、多様な「個」が自分らしく働ける環境を整えている。
もちろん、育ってきた背景や価値観が違えばうまくいかないこともある。しかし、そのうまくいかなかったことを教訓として学ぶことで、スタッフ一人ひとりが成長することを体現している。以前取材をしたLUSHの従業員の方は、こう言っていた。
「LUSHが動物実験に反対しているからといって、スタッフに対して『毛皮を着てはダメ』と強要するわけではない。ただ、知らなかったことを自分で調べる過程で、自分なりの理解・解釈ができ、だからダメなんだなと気づくことができる。自分の理解を深めていくしかない」
多様性を認めることは、他者のためでもあると同時に、自分のためでもあるか。つまり、自己理解につながるのだ。
違う意見を完全に受け入れる必要はないし、おそらく無理だろう。ただ、異なる環境で育ってきた人の意見や価値観をきっかけに、未知の分野に触れて新しい知識を得たり、わからないことを調べる中で、自分の意見をもって、自分をよりよく理解することができるようになる。
日本におけるダイバーシティ
日本では2003年に発表されたダイバーシティ・マネジメントに関する日経連のレポートがきっかけで、この多様性に関する考え方が浸透し始めた。
少子高齢化が進み、労働力人口が慢性的に不足すると考えられている今後の日本で、女性、外国人、障害者、シニア層など多様な人材を登用することは重要な課題になっている。企業によっては「ダイバーシティ=女性の活躍」ととらえている場合があるが、真のダイバーシティとは、先述したとおり、性別に限らずさまざまな属性と個の違いを尊重することだと認識する必要がある。
また日本では、ダイバーシティを「ワークスタイルの多様性」という観点でとらえることも多い。労働者自身が出社時間と退社時間を決められるフレックスタイム制、リモートワークを活用した勤務地の柔軟化など、多様な人材が働きやすい制度を整備することで、ダイバーシティを推進している企業も存在する。
日本では、ダイバーシティの推進に本格的に取り組んでいる企業がまだ少ないと指摘されている。しかし、人口構成の変化やグローバル化といった課題に直面している日本の企業は、成長戦略の一環としてダイバーシティの取り組みを進めることが、今後求められそうだ。
【参照サイト】ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義
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