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ダイバーシティ(多様性)とは・意味

diversity

ダイバーシティとは?

日本語で「多様性」と訳されるダイバーシティ。組織やグループなどで多様な人材を登用し、声を取り入たり、それぞれが持つ違った能力をいかすことで、組織の競争力を高めようとする取り組みを指す。

そういうと、「うちの職場では女性が活躍しています!」や、「障害をいかした仕事の仕方を!」「マイノリティの立場を守ろう」といった声があがり、それを会社経営におけるダイバーシティだと捉える人がいる。しかしそれは、多様性の一部に過ぎない。

ここでいう多様とは、たとえば以下のようなものだ。高千穂大学高千穂学会の中村豊氏は、ダイバーシティの属性を、生まれ持ったもので変えようがない「表層的ダイバーシティ」と、ぱっと見では違いがないが、実は複雑な「深層的ダイバーシティ」の2種類に分けている。

表層的ダイバーシティ

深層的ダイバーシティ

  • 価値観
  • 仕事観
  • 宗教
  • 学歴
  • 職務経験
  • コミュニケーションの取り方
  • 受けてきた教育(→人によってはデジタル格差もある)
  • 第一言語
  • 嗜好
  • 組織上の役職や階層

上記はわかりやすいように分けて書いてあるが、物事の捉え方や価値観は育ってきた国や時代にも影響を受けるものなので、表層的ダイバーシティによる違いが、深層的ダイバーシティを生む要因になると考えることもできる。

ダイバーシティが広がった背景

もともとダイバーシティは、1960~1970年代のアメリカで、女性やマイノリティが差別されることなく採用され、公正な処遇を受けることを目指して広がった取り組みだった。

1972年には「雇用機会均等法」における告訴対象が直接差別、間接差別に拡大。アファーマティブ・アクション(積極的格差是正装置)が雇用者に雇用形態の詳細な報告や救済計画の提出を義務付けた結果、1976年までにアファーマティブ・アクションの措置を企業の70%以上が実施、大企業の80%が雇用機会均等法施策を保有するなどの功績を生み出した。こうして、1980年代~1990年代には、組織のリスクマネジメントとして多様性を取り入れることがグローバルで推進された。

現代におけるダイバーシティは、特定の人々を性別や人種などの生まれ持った属性でくくり、それを保護することではなく、一人ひとりが持っている違いを認め、尊重しようということなのだ。

ダイバーシティ&インクルージョン

ビジネスにおいては、インクルージョン(包括)と一緒になった「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」という概念がある。ビジネスにおけるインクルージョンとは、性別や年齢、国籍などさまざまな属性を持つ人々を等しく認め、互いの違いを受け入れ、活かしあいながら、それぞれに実力を発揮できる職場のあり方を指す。「D&I」と略されることもある。

近年の女性の活躍推進や外国人雇用の促進、経験豊富な高齢者の採用なども、D&Iの例である。さらに、そうした属性だけでなく、時短勤務や在宅勤務などの働き方制度の整備や、妊娠・出産・子育てしやすい職場環境や制度づくりなど、「働き方」を多様にすることも、D&Iとして各企業で進められている。

多様な人材が集まっている状態を指すダイバーシティと、その状態を発展させ、多様な人材が一体となって働いている状態を指すインクルージョン。この二つの取り組みを両立することで人材が定着し、経営上の成果を出すことにつながると考えられている。

ダイバーシティに関する課題

現状、私たちのダイバーシティは社会の中で十分に認められ、活かされているだろうか。ここでは、今実際に社会で起こっている多様性に関する課題をあげていく。

性の多様性が認められない場合

  • 性自認や性的指向をカミングアウトすることによって、差別や偏見を受けてしまう
  • 当事者の了承を得ずにその人の性的指向が他人に暴露されることで、精神的に追い込まれ自殺に至ってしまう
  • 就職活動や職場で、ストレート()を前提とした質問を受けてしまう
  • 同性カップルの公営住宅への入居が認められない
  • 同性パートナーが医療現場に運び込まれた場合、病状説明や面会が認められない

※身体的性と自分で認識している性が一致しており、かつ異性を愛するセクシュアリティのこと。

人種の多様性が認められない場合

  • 特定の国の出身者であること、又はその子孫であることを理由に、社会から追い出そうとされたり危害を加えられたりする
  • 受けられる教育機会に差が出てしまうことで、将来の収入の格差が生まれてしまう
  • 人種を理由に、教育機関への入学選考で不利になる
  • 外国人であることを理由に、住宅の賃貸契約が結べない
  • 移民であることを理由に、就職先の選択肢が少ない

働き方やキャリアの多様性が認められない場合

  • 女性は出産や育児を理由に退職せざるを得ない場合がある
  • 一度企業退職してしまうと子育てしていた期間をブランクと捉えられ、再就職が困難な傾向がある
  • 職場に男性が産休や育休を取りにくい雰囲気がある
  • 子育てのために転勤ができないことが理由で、能力があっても管理職になれない人がいる
  • 職場での服装や振る舞いにおいて、女性らしさや男性らしさを求められ、身体的に苦労する場合がある(女性へのパンプスの着用強制など)

意見の多様性が認められない場合

  • 人と違う意見をためらってしまい、発言が減ってしまう
  • 場の空気を読んで発言しなくなることで個人の能力が十分に発揮されない
  • 同調圧力が働きやすくなってしまう
  • 役割やポジションを超えるシナジーが生まれにくくなってしまう

なぜ企業にダイバーシティが必要なのか

では、そもそもなぜ多様性が大事なのか。認めるべきなのか。自分と似た人と一緒にいた方が楽なのに。とくに、「空気を読む文化」があるほど同質性の強い日本では、珍しくない本音かもしれない。

そんななか、国内でもいち早くLGBT支援宣言を掲げたり、難民支援のグローバルキャンペーンを行うなど、社内の多様性を認め、積極的に歓迎している会社のひとつが、世界的に有名なイギリス発祥の化粧品メーカーであるLUSH(ラッシュ)だ。

LUSHが他社と比べてユニークなのが、逆ピラミッド型の組織体系だ。つまり、お客さまが一番上で、その次に店舗で働くスタッフがいて、リーダー層が下で上の人たちを支えている。なので、店長の上に上司のあたるエリアマネージャーがいない。それは、スタッフ一人ひとりがオーナーシップを持ってLUSHの信念を伝えてほしいという思いからだ。この思いは、広告を打たず、店舗をハブとしている姿勢からもうかがえる。

また、同社は「Freedom of Movement」(移動の自由)という信念を掲げている。まず、個人の希望ではない人事異動はない。また、キャリアはオープンになっており、自分で空いているチャンスを見つけ、自ら手を挙げるイニシアチブが大切にされている。

そして、この「Freedom of Movement」には、物理的な場所の移動だけでなく、「他者との違い」という壁も、「自分自身の可能性」への壁も越えていくことが含まれている。

このように、会社として、多様な「個」が自分らしく働ける環境を整えている。

もちろん、育ってきた背景や価値観が違えばうまくいかないこともある。しかし、そのうまくいかなかったことを教訓として学ぶことで、スタッフ一人ひとりが成長することを体現している。以前取材をしたLUSHの従業員の方は、こう言っていた。

「LUSHが動物実験に反対しているからといって、スタッフに対して『毛皮を着てはダメ』と強要するわけではない。ただ、知らなかったことを自分で調べる過程で、自分なりの理解・解釈ができ、だからダメなんだなと気づくことができる。自分の理解を深めていくしかない」

多様性を認めることは、他者のためでもあると同時に、自分のためでもあるか。つまり、自己理解につながるのだ。

違う意見を完全に受け入れる必要はないし、おそらく無理だろう。ただ、異なる環境で育ってきた人の意見や価値観をきっかけに、未知の分野に触れて新しい知識を得たり、わからないことを調べる中で、自分の意見をもって、自分をよりよく理解することができるようになる。

なぜ「多様性」が大事なのか?LUSHの取り組みが教えてくれたこと

日本におけるダイバーシティ

日本では2003年に発表されたダイバーシティ・マネジメントに関する日経連のレポートがきっかけで、この多様性に関する考え方が浸透し始めた。

少子高齢化が進み、労働力人口が慢性的に不足すると考えられている今後の日本で、女性、外国人、障害者、シニア層など多様な人材を登用することは重要な課題になっている。企業によっては「ダイバーシティ=女性の活躍」ととらえている場合があるが、真のダイバーシティとは、先述したとおり、性別に限らずさまざまな属性と個の違いを尊重することだと認識する必要がある。

日本では、ダイバーシティの推進に本格的に取り組んでいる企業がまだ少ないと指摘されている。しかし、人口構成の変化やグローバル化といった課題に直面している日本の企業は、成長戦略の一環としてダイバーシティの取り組みを進めることが、今後求められそうだ。

日本は多様性のない国なのか?

多様性ってそもそも何?その必要性を考える【ウェルビーイング特集 #21 多様性】

【参照サイト】ダイバーシティ&インクルージョンの基本概念・歴史的変遷および意義

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