「食べられる森」という、ガーデニングのコンセプトをご存じだろうか。英語で「エディブルフォレスト」「フォレストガーデン」「フードフォレスト」と呼ばれることもある。
この森の目的は、地域住民が野菜や果物など自分たちが食べるものを育て、生物多様性を育んだり、地域交流を促進したり、食育を推進したりすることだ。
そんな、食べられる森の一例が、2021年にフランスのシャランで始まったプロジェクトだ。
活動をまとめているのは、エコライフを実践する市民ネットワークのLes GarnemAntsで、土地の広さは2.3ヘクタール。プロジェクトは、同国の農業・食料省から1万6千ユーロ(約200万円)の助成金を受けて実施されている。
Les GarnemAntsは2022年1月、食べられる森に初めて木を植えた。約50種類の木を、130本近く植えたという。プロジェクトは長期に渡る計画で、2022年4月までを目途とする第1フェーズでは、食べられる森の核となる部分を作り、物置小屋、トイレ、井戸なども設置する。
2022年の春から夏にかけての第2フェーズでは、植栽の維持管理を行うと同時に、巣箱、ピクニックテーブル、展望所などを作るワークショップを開催。また、コンポスト、生物多様性、ゼロウェイストなガーデニングなどについて学べる、教育系のワークショップも実施する予定だ。発電したり、雨水を集めたりするための設備も設置するという。
2022年秋以降の第3フェーズでは、栽培を続けながら、食べられる森をより広く一般に公開することを目指している。必要な食料を自分たちで生み出し、地域のレジリエンスを高めると同時に、自然に生息する生物たちも気持ちよく過ごせる場にしたいという。
収穫物は基本的に、森をつくる作業などに参加したメンバーの間で分配されるが、収穫物の少なくとも10%は、社会貢献活動を行う地元の団体に寄付し、恵まれない状況にいる人たちへの支援に役立てる。貧困問題に取り組むことも、地域のレジリエンス向上に繋がるのではないだろうか。
輸送手段や保存技術が発達していない時代は、地域で生産した食べ物をその地域で消費することが、ごく一般的に行われていた。人口の大都市への集中、流通の発達、食料生産における効率性と収益性の追求など様々な理由により、食料の生産地と消費地が遠くなる昨今、食べられる森のような取り組みを通して、農業の現場を知ることが大切なのではないだろうか。
【参照サイト】 Association éco-citoyenne LES GARNEMANTS – Création de la forêt comestible