AIやロボットの技術革新が続き、より高度なサービスや製品の提供が期待される一方、「人間の労働が代替されるのでは?」という懸念も浮上する昨今。
新しい技術を、人間の価値を高めるために活用するには、どのようなアプローチを取ればいいのだろうか。
そもそも、私たちは今、ロボットなどの機械と良好な関係を築けているだろうか。車両の故障などで電車が遅延すると、イライラしてしまう私たち。自動運転車についても、本当に全て機械に任せられるようになるのか、なかなか信じられない人もいるのではないだろうか。
こういった、機械と人間との間に生じる摩擦や疑念に対し、「機械があえて弱さをさらけ出せば、人が機械を助けてあげようと動き、人と機械が上手く協働できる社会になるのではないか」と考え、開発されたのが「弱いロボット」だ。
弱いロボットを開発したのは、豊橋技術科学大学のインタラクションデザイン研究室(ICD-LAB)。弱いロボットには様々な種類があり、その一例が、自分でごみを拾えない「ごみ箱ロボット」だ。
ごみ箱ロボットは、落ちているごみを拾いたそうにしながら、よたよたと動く。すると、周りの人が「ごみを入れてほしいのだろう」と察し、ロボットにごみを入れる。ごみ箱ロボットは、自分でごみを拾えないという弱さを適度に見せることで、人間の協力を上手く引き出し、ごみを集めるのだ。
ごみ箱ロボットは、ごみを入れてもらうと少し傾き、お礼をするような仕草をする。人間は、「ロボットの助けになれた」と嬉しく感じる。人間が機械に完璧さを求め、「機械が全部やってくれる」と期待するのとは異なる、心温まる関係性だ。
このように、互いの弱いところを上手く開示しながら補い合う姿勢は、人間関係においても大切だろう。弱いロボットというコンセプトは、共生社会を実現するための、ひとつのヒントになるかもしれない。
ICD-LABは、たまに弱音を吐く自動運転システム「NAMIDA」の開発や、ロボットが発する最小の手掛かりから人の解釈を引き出す研究なども行っている。たとえば、「もこもこ音」を発するごみ箱ロボットは、「またのご利用をお待ちしております」などと話す機械には無い愛嬌を醸し出しており、興味深い。
人間も機械も完璧ではないからこそ、機械と協働することが必要だ。機械との心理的な距離を縮めるコミュニケーションの取り方について、弱いロボットに学ぶことは多いのではないだろうか。