スターバックスが、中絶する社員の交通費を負担する理由

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2022年5月2日、米連邦最高裁判所が、人工妊娠中絶を憲法上の権利と認めた1973年の判決を覆す可能性があると報じられた。

裁判所の過半数が支持した意見が載った文書が公開され、最高裁がそれに対して、「文書は本物だが、裁判所の判断を示すものではない」とするプレスリリースを発表するなど、大きな騒動に発展している。

自分の身体に関することを自分で決める権利が脅かされるのは、大きな問題ではないだろうか。性と生殖に関するヘルスケアサービスを提供するアメリカのNPO団体Planned Parenthoodによると、最高裁が過去の判決を覆せば、26の州にいる3,600万人以上の女性が中絶の機会を失う可能性があるという(※1)

この騒動の中、米コーヒーチェーン大手のスターバックスは5月16日、アメリカにいる24万人の従業員に対して、自宅から100マイル(約160キロメートル)以内の場所で中絶手術を受けることができない場合、同社が手術を受けるための交通費を払い戻すと発表した。

アメリカでは州によって中絶を禁止しているかどうかが異なるが、同社は、住む場所に関係なくすべての従業員が質の高い医療にアクセスできるべきだと考えている。また、従業員やその家族が良いと思う選択を実現できるよう、サポートする構えだ。

交通費の払い戻しを受けられるのは、同社のヘルスケアプログラムに加入している従業員と、その従業員に扶養されている家族だ。

また、中絶手術だけでなく、ジェンダーアファメーション(性自認の確認と肯定)のための医療処置を受ける場合も対象となっており、性の多様性を尊重する姿勢を示している。

スターバックスの他にも、米ネット通販大手のアマゾンが、中絶手術を含む医療処置を受けるための交通費を払い戻すと報じられたり、米金融大手のシティグループが、一部の州で生殖医療に関する法律が変わったことを受けて、必要なリソースにアクセスするための移動手当を支給すると発表したりと、同国では中絶規制が非常に注目されていることがうかがえる。

アメリカ社会の、中絶権をめぐる分断には驚かされる。今後も、さまざまな企業、行政、裁判所がどのような対応を取るのか注目したい。

※1 NEW RESEARCH FROM PLANNED PARENTHOOD AND IN OUR OWN VOICE SHOWS THAT HALF OF WOMEN OF REPRODUCTIVE AGE COULD LOSE ACCESS TO LEGAL ABORTION
【参照サイト】Letter to Starbucks Partners: Ensuring Access to Healthcare
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