ノルウェーの首都・オスロ市は、2030年までに世界初のゼロエミッション都市になるという目標を掲げており、その一環として、2023年末までに公共交通機関の全てを電動化することを目指している。もし実現すれば、オール電化の公共交通システムを持つ世界初の首都となる。
そのために同市は、2023年末までに市内のディーゼル燃料バスを450台の電気バスに置き換える意向だ。オスロ市の副市長であるシリン・スタヴ氏は、「バスの置き換えには約4,700万ドル(約64億円、1ドル=136円)の費用がかかるが、維持費などを加味すると、長期的には市の資金の節約につながる。電気バスはディーゼル燃料バスに比べて維持管理費用が安く、バスの運営会社にもメリットがあり、Win-Winの選択だと言えるだろう」
と、ロイター通信に語っている。また、市の前回の入札では、電気バスはディーゼルバスよりも価格が5%安かったという。
同市ではフィヨルドを航行するフェリーのほとんどがすでに電動化されているほか、海上輸送を行う船舶でも電動化を進めていたり、市内中心部への自動車乗り入れ禁止措置や、路面電車と自転車レーンの拡充なども進んでいたりする。こうした取り組みは、CO2排出量の削減だけでなく、騒音の削減や、都市の空気の質の改善にもつながるだろう。
一方、ノルウェーの近隣国であるデンマークの首都・コペンハーゲンでは今年、2025年までに世界初のカーボンニュートラル都市になるという計画が不履行となった。大きな要因は、CO2を地下に固定する技術・CCSを導入予定だった大型施設が、基金からの資金調達に失敗したことだという。
CO2排出削減に関する野心的な目標を掲げるのは、とても大切なことだ。2025年までという期限には間に合わなかったにせよ、その目標に向かって取り組みを進めたことで、コペンハーゲンのCO2排出量には少なからず変化があったはずだし、コペンハーゲン市長は実際、2026~28年には同市がカーボンニュートラルを実現できる可能性を示唆している。
現在、オスロやコペンハーゲンだけでなく、スコットランドのグラスゴーや、フィンランドのヘルシンキなどの都市、スウェーデンやイギリスなどの国、IKEAやAppleなどの企業でも、2030年、45年、50年までにカーボンニュートラルを実現するという計画が掲げられている。こうした目標を掲げる都市や企業は、市民から良い印象を得やすいだろう。
シンガポールに拠点を置くメディアCNAは、こうした大規模なCO2削減計画は、進捗報告や具体的な排出量の目標数値など、重要なはずのディテールの設計が省略されていることが多いと、さまざまな研究で報告されていると指摘した。どんなに素晴らしい目標も、達成されなければ口だけとなってしまう。私たちはこれから、掲げられた目標だけでなく、その計画の妥当性や進捗にも、もっと注目する必要があるだろう。
筆者をはじめ、専門知識を持たない一般市民が、気候計画の妥当性を判断するのは極めて難しいこと。まずは、来年末までにオスロ市でオール電化の公共交通システムが本当に実現するかどうかを、見届けることから始めてみてはどうだろう。
野心的な目標を掲げたことに敬意を表しつつも、ただ目標を掲げるだけでは市民からの支持は得られないのだと伝えるためにも。まずは自分から、声を上げつつ結果を見守る姿勢を持っておきたい。
【参照サイト】 Oslo aims to have world’s first zero-emissions public transport network – The Local
【参照サイト】 Norway to slash pollution with the world’s first zero-emissions public transport network | Euronews
【参照サイト】 E-bus deal puts Oslo on track for zero-emissions public transport goal | Reuters
【参照サイト】 Commentary: Copenhagen has abandoned its 2025 net zero target. This casts doubt on other major climate plans – CNA
Edited by Kimika