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CCS(二酸化炭素回収・貯留)とは・意味

CCS

CCSとは?

CCSとは、Carbon dioxide Capture and Storageの略。産業活動から排出されるCO2を、大気放散する前に分離・回収し、地中や海底などに隔離、長期間にわたり安定的に貯留すること。

CO2を安全に貯留するには、地表から1,000m以上の深さにある貯留層(砂岩など)と、ふたの役目をする遮へい層(泥岩など)と呼ばれる CO2を通さない層が必要。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の調査では、地層を適切に選定し、適正な管理をおこなうことで、貯めたCO2を1000年にわたって貯留層に閉じ込めることが可能であると報告されている。

CCSについては、日本の今後のエネルギー政策を定めた「第5次エネルギー基本計画」で、2020年頃のCCUS(CCSを有効に利用する技術のこと)の実用化を目指した研究開発、国際機関との連携を進めることが明記されているほか、令和元年に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」のなかでも、大気中へのCO2排出を抑制していくために、CCUやカーボンリサイクルとともに推進、普及のカギを握るものとされている。

どうして今CCSなのか?

IPCCの地球温暖化に関する1.5℃特別報告書は、気候変動による最悪の事態を避けるため、今世紀半ばまでにネットゼロ排出を到達することの重要性を強調している。さらに多くの国が今、脱炭素に向けてそれぞれ達成目標を掲げており、気候変動へのアプローチのために炭素と向き合うことは欠かせないこととなった。IPCCの報告書では世界的な温暖化を摂氏1.5度に抑えるために、4つの排出経路例を示しているが、その全てがCO2の除去に関わる。そして、そのうちの3つがCCSの大規模な利用を必要としている。

セメント、製鉄、そして化学部門においては、各産業プロセスの性質上、CO2の排出や、高温での加熱が必要となり、脱炭素化が最も難しいとされている産業だ。エネルギー移行委員会および国際エネルギー機関(IEA)などの複数のレポートによると、これらの産業では、ネットゼロ排出を達成できない可能性があり、CCSを適用しない場合はさらにコストが高くなると、結論づけられている。そういうわけで、CCSは、有用な選択肢の一つとされているのだ。

北海道・苫小牧で行われた実証試験

日本では過去に、新潟県長岡市で実証実験が行われ、最近では北海道・苫小牧で、日本初の大規模なCCSの実証試験が行われた。経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、日本CCS調査株式会社(JCCS)が中心となり、2012年度から設備の建設を開始。2016年4月から、海底下の地中深くにCO2を貯留する作業(圧入)を開始し、2019年11月、目標としていた累計CO2圧入量30万トンを達成して圧入を停止した。

その後2020年度末まで行われた実証試験では、分離・回収から圧入・貯留までの一貫システムの操業および安全性や環境管理を確認。各種モニタリングおよび海洋環境調査を通じて、CCSが安全かつ安心できるシステムであることが確認された。

今回の実験では、製油所の水素製造設備から供給されるCO2を含むガスを、隣接するCO2分離・回収/圧入設備までパイプラインで輸送。その後、そのガスからCO2を分離・回収して、海岸から3~4km離れた海底下の貯留層へ圧入・貯留する方法で行われた。

都市圏の近辺で、住民の理解を得ながら、安全・安心にCCSの操業を完了できた、世界で唯一の事例とされている。

CCSの実施に伴う弊害はあるのか?

CCSを実施するにあたり、懸念点として挙げられる一つが、CCSを行うことでCO2が排出されることはあるかという疑問だ。これに関しては、エネルギー消費によって一定量のCO2は排出されるものの、苫小牧の施設では省エネ型の分離回収などを実施しているため、CCSにかかわるCO2排出量は圧入量の15%程度となっている。

また、CCSの実施する地震の発生の懸念については、事前に地層の調査や評価を行ったうえで、断層帯を避け、CO2が浸透しやすい地層に地層を破壊しない条件を維持してCO2を閉じ込めているため、CCSによって地震が誘発されることはないと考えられている。

世界の事例

今世界には65の商用CCS施設がある。そのうち26施設が操業段階で、2か所が操業停止中、3施設が建設段階にあるほか、13施設が開発の後期段階、21施設が初期開発段階だ。現在操業中のCCS施設は、毎年およそ40メガトンのCO2を回収及び恒久的に貯留することができる。さらに、34のパイロットおよび実証規模のCCS施設が、操業段階または開発段階であり、テストセンターも8つ存在する。

CCSを先導するのは米国で、2020年新たに始動した17の施設のうち、12の施設の所在地が米国。その他、英国やニュージーランド、オーストラリアに施設がつくられた。

【参照サイト】世界のCCSの動向 2020年版
【参照サイト】苫小牧市におけるCCS大規模実証実験
【参照サイト】日本CCS調査株式会社 苫小牧におけるCCS大規模実証プロジェクト
【参照サイト】経済産業省 資源エネルギー庁 CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)
【参照サイト】「国内外の CCS Ready に関する取組状況等について」 概要
【参照サイト】環境展望台




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