街中でごみ拾いをすると、空き缶、ペットボトル、お菓子の包み紙などいろいろなものが道に放置されているが、たばこの吸い殻もよくポイ捨てされているもののひとつだろう。実際、筆者が住むスペイン・バルセロナにも多くの吸い殻が落ちている。
カタルーニャ・レゼロ財団(Catalan Rezero Foundation)の報告書によると、カタルーニャ州の市町村では、住民一人当たり年間12~21ユーロをたばこの道路清掃に支払っており、沿岸部ほどその割合が高い。さらに地中海西部のビーチに「最も多く存在するごみ」は、たばこの吸い殻としている。各メーカーが実施しているたばこマナーの啓発キャンペーンや携帯灰皿の配布など、既存の対策では不十分であると指摘されているのが現状だ。
そんななか、スペインでは新たな環境規制が導入され、たばこメーカーは路上や海岸に落ちている吸い殻を清掃する費用の支払義務を持つことになった。たばこメーカーは廃棄された吸い殻を回収し、廃棄物処理のために輸送する責任を負う。また、各メーカーはポイ捨てをしないように市民を教育する義務も担う。つまり、たばこメーカー自身が環境汚染対策の責任を持つことになるのだ。
この新しい規制は、昨年スペインで導入された使い捨てプラスチックの禁止にまつわる法律の一部である。ほかにも使い捨てのプラスチック製のストロー、カトラリー、綿棒などが禁止となっている。
清掃費用がどれくらいかかり、どのように実施されているのか詳細はわかっていないが、たばこの値上げによって費用を捻出していると想定されている。実際、物価上昇に伴い、スペインでは今年5月にたばこの価格改定が発表されている。
スペインは近年、喫煙抑制の対策を多数導入している。昨年7月には、バルセロナのすべての公共ビーチで喫煙が禁止され、違反者には30ユーロの罰金が科されている。
カナダで「たばこ1本1本」に警告表示がされるようになったり、日本でもたばこ税が引き上げられたりと、今世界ではたばこにまつわるさまざまな規制が進んでいるが、それでも喫煙者は多くいる。実際、2020年の調査によるとスペイン人の成人の5人に1人が毎日喫煙しているそうだ。
たばこは喫煙者本人の健康被害だけではなく、周囲にいる人の受動喫煙、環境汚染など多くの課題を抱えている。たばこには、バイオプラスチックの一種である酢酸セルロース繊維でできたフィルターが入っている。毎年推定50億本が海に捨てられているということから、レジ袋やペットボトルよりもたばこの吸い殻のほうが海洋汚染に加担しているとも言われている。
今回の規制ではたばこメーカーが費用を負担することになったが、値上げとなれば、回り回って消費者自身が清掃費用を負担する形になるだろう。価格上昇により、禁煙を選択する人が増える可能性はある。しかし、最終的には個々の人々が自らの意志で禁煙を選択することが重要ではないだろうか。
【参照サイト】Spain tobacco firms to pay to clean up cigarette butts
【参照サイト】Nueva actualización de precios del tabaco en España: estas marcas suben en mayo
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Edited by Erika Tomiyama