G20サミット、9月9日からニューデリーで開催へ。注目される3つのテーマを解説

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2023年9月9日と10日の2日間にわたり、インドのニューデリーでG20サミットが開催される。今年のテーマは「Vasudhaiva Kutumbakam」(ひとつの地球、ひとつの家族、ひとつの未来)。サミットには、G20史上最多となる43名の代表団が参加し、エネルギーと食糧安全保障や、持続可能性などを優先課題として議論する。インドは2022年12月から2023年11月まで議長国を務める。

今年のテーマ「Vasudhaiva Kutumbakam」は、「世界はひとつの家族」と訳され、今年のG20における持続可能性へのコミットメントを表現している。サンスクリット語の古い経典『マハ・ウパニシャッド』に着想を得たこのテーマは、人間、動物、植物、微生物など、すべての生命の重要性と、地球上および宇宙全体における相互依存を表している。唯一無二の惑星に住む同じ人間、つまりひとつの家族として、私たちは協力して問題を改善し、解決していかなければならない。民主主義・多国間主義国(※)であるインドは、この「世界はひとつの家族」という理想を体現する重要な場所となる。

※多国間主義とは、一つの問題に対して多数の国が協力するシステムのことである。例えば、国連は世界の平和と安全のために多くの国が協力する多国間主義の組織である。

また、今年のG20の優先課題のひとつである「LiFE(Lifestyles for the Environment)」を例証するものでもあり、地球のために持続可能なライフスタイルに転換することの重要性を示している。

本記事では、「そもそもG20とは?」「G20はなぜ重要なのか?」「ニューデリー・サミットで特に注目すべき3つのポイント」を紹介する。

G20とは?

G20のGはGroupの略で、20の国と同盟からなる国際経済協力のための政府間フォーラムである。G20は1999年に結成され、国際経済、金融、貿易、医療、気候変動などの問題について世界的な対策を策定するために定期的に会合を開いている。

19か国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ、イギリス、アメリカ)と欧州連合(EU)で構成されている。

G20議長国として、インドは2022年から2023年までのアジェンダを取り仕切る。ニューデリー・サミットは、1年間の会議とプロセスの集大成として9月に開催される。サミットの終了時に議論の総括として、G20首脳宣言を発表し、国際的な問題に協力して取り組むことが再確認される。

昨年2022年の議長国はインドネシアで、バリ島でサミットが行われた。バリ・サミットでは「食料・エネルギー安全保障」、「国際保健」、「デジタル・トランスフォーメーション」という三つの主要課題に焦点を当てて議論が行われた。ロシアのウクライナ侵攻による食料・エネルギー価格の高騰や供給不足、そしてパンデミック後の経済政策について、早急な対応が必要であるとの認識が共有された。

今年のニューデリー・サミットでは、これまでの議論を継続する。インド政府は6つのG20優先課題を掲げている。

  1. グリーン開発、気候金融、LiFE
  2. 加速する包摂的で強靭な成長
  3. SDGsの進捗加速化
  4. 技術革新とデジタル公共インフラ
  5. 21世紀の多国間機構
  6. 女性主導の開発

G20はなぜ重要なのか?

G20の加盟国は、世界GDPの約80%、世界輸出の75%、世界人口の60%を占めており、これらの国々が世界経済の大部分を定義していると言える。経済大国のグループとして政策の調整と協調を目指すこのフォーラムは、主要国際経済問題に関するシステムやガバナンスの形成と強化において重要な役割を果たしている。

G20の誕生の経緯を振り返ると、1999年のアジア金融危機を契機に、G7に加えて「新興市場国」12か国を含む20か国の財務大臣・中央銀行総裁で構成されるG20が発足した。G20が結成されたのは、国際金融システムを議論する上で、国際資本市場で影響力を増していた「新興市場」諸国の参加が重要であるとの認識が広まったからである。

リーマン・ショック後の経済・金融危機を受けて、G20は各国首脳が参加する会議へと昇格し、2008年にワシントンDCで第1回G20サミット(首脳会合)が開催された。世界金融危機に対処するため、G20諸国は経済再生、貿易障壁の撤廃、金融システムの大幅な改革を実施するため、4兆ドル相当の支出策に合意した。

G20サミットは「金融と世界経済に関する首脳会合」として知られているが、その議論は当初の議題であったマクロ経済問題だけでなく、貿易、持続可能性、健康、農業、エネルギー、環境などへと拡大している。サミットは毎年開催されている。

「ニューデリー・サミット」の注目テーマ3つ

G20は世界経済のさらなる発展を目的としているが、本稿では人類に直接的な脅威をもたらす3つの喫緊の問題を注目テーマとして取り上げたい。ニューデリー・サミットで議論されるこれらの問題には、戦争・飢饉(ロシア戦争に起因する食糧・エネルギー不足)、地球崩壊(気候変動に対応するライフスタイルの適応)、疫病(パンデミックへの反省から導き出される健康戦略)が含まれる。

1. 食料とエネルギーの安全保障

ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機は、食糧不足とエネルギー価格の高騰につながっている。前回のバリ・サミットでは、「ロシア連邦によるウクライナ侵攻を強く非難」し、ロシア軍の即時撤退を求める共同宣言が参加首脳によって発表された。ウクライナ侵攻と食糧・エネルギー安全保障は、ニューデリー・サミットの焦点であり続けるだろう。

世界の食料システムを改善し、すべての人が廉価で安全な食料にアクセスできるようにすることが急務である。エネルギー安全保障には、クリーンエネルギーへの転換と、資源のサプライチェーンの確立が必要である。サミットでは、G20として連携して対処されることが期待される。

2. 気候変動と生物多様性

LiFE(Lifestyle for Environment/環境のためのライフスタイル)は、COP26でインドのモディ首相が紹介した概念であり、地球や全ての生物と調和した持続可能な消費と生産に関して、個人や社会レベルでの行動変容を促進するものである。ニューデリー・サミットは、このLiFEの枠組みに基づき、気候変動問題への対応を強調する。特に気候変動資金と技術向上に重点を置くとともに、「途上国」のための公正なエネルギー転換を確保することを目指す。

3. 国際保健政策

ニューデリー・サミットでは、持続可能な開発アジェンダ(SDGs)の進捗状況を確認し、特にCOVID-19パンデミックの影響への対処に焦点を当てる。このサミットは、今年5月に日本で開催されたG7広島サミットの保健分野の議論を引き継ぐ。広島サミットでは、国際保健を主要議題のひとつとし、公衆衛生危機への対処持続可能な保健医療アクセス、医療技術の向上という3つの柱に焦点を当てた。

ニューデリー・サミットでも、国際保健システムの改善が重要なテーマとなる。特に、感染症危機の際に、途上国にワクチンを公平に分配できる枠組みを確立する必要性が、先日のG20保健大臣会合で認識された。また、途上国に資金援助を提供するための平時資金の蓄積メカニズムについても議論された。パンデミックから学んだ教訓に基づき、国際保健システムが構築・強化されることが期待されている。

前回から多くの課題が引き継がれているニューデリー・サミット。G20による協調的かつ集団的な行動を通じて、各分野の問題に対するコミットメントが強化されることを期待したい。

【参照サイト】インド政府, Lifestyle for Environment – LiFE
【参照サイト】インド政府外務省 G20 事務局 G20について
【参照サイト】Ministry of Earth Sciences, Overview of G20
【参照サイト】india.gov.in, The Group of Twenty (G20)
【参照サイト】McBride, James, Siripurapu, Anshu and Berman, Noah. ‘What Does the G20 Do?’ Council on Foreign Relations.
【参照サイト】Kumarakom, Kerala. ‘2nd G20 Development Working Group Meeting under Indian Presidency’.
【参照サイト】外務省 G20外相会合(概要)
【参照サイト】外務省 G20に関する基礎的なQ&A
【参照サイト】外務省 G20バリ・サミット(概要)
【参照サイト】外務省 2023年G7日本議長年における保健分野の成果
【参照サイト】アフリカ日本協議会 -Africa Japan Forum- 「パンデミック対策に『違い』を作り出せるか?」
【参照サイト】日本経済新聞 感染症危機、途上国支援の枠組みづくり合意 G20保健相
【参照サイト】ラフ, マイケル 「多国間主義を通してグローバル問題を解決する」 アメリカ大使館
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