街の自転車をスマホ充電スポットに。ホームレスの人々を救う「漕ぐ」バッテリー

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ロンドンでホームレス状態にある人のうち、70%が所持しているもの。彼らにとって大切なライフラインとなっているそれが何だか分かるだろうか。

答えは、「携帯電話」だ(※)

メールアドレスを登録して、給付金の申請をする。銀行にアクセスする。支援施設を訪ねるために、Googleマップを使う。パートタイムの仕事に応募するために、電話をかけたり、担当者からの折り返しを待ったりする。友人に助けを求めて連絡する。これらはどれも、携帯電話がなければできないことだ。

反対に言うと、携帯電話の充電が切れてしまえば、つながりが失われ、支援を受けることができなくなってしまうということになる。

この問題にアプローチしようと立ち上がったのが、ロンドン芸術大学卒業生でデザイナーのルーク・タルボット氏だ。彼は、ホームレス状態の人々がより簡単に携帯電話を充電できるようにするデバイス「My PowerBank」を開発した。

My Powerbank

My PowerBank
「My PowerBank」は、ロンドンの公共レンタサイクルに磁力でくっつけて使うモバイルバッテリーである。これを自転車のギアにかかるように取付け、自転車を後ろ向きに漕ぐと、チェーンの回転運動により発電される仕組みになっている(ペダルを漕ぐのは後ろ向きなので、自転車をレンタルする必要はない)。25分間ペダルを漕げば、無料で携帯電話をフル充電することが可能だ。

タルボット氏は、様々な協会やシェルターなどと協力して、ホームレス状態の人々にこのモバイルバッテリーを無料で配布したいと考えているという。

タルボット氏は、公共レンタサイクルの設置場所が、ロンドンのホームレス状態の人々が存在している場所と重なっていることに気づき、レンタサイクルを活用する方法を模索することにしたのだという。

これまで、ホームレス状態の人々は、街中にある無料のストリートハブで携帯電話を充電することが多かったようだが、「ネット上に情報がなくどこにハブがあるのか探しづらい」「USBポートが破損していて使えない」「人目につくのが嫌で利用しにくい」といった問題があった。

しかし、「My PowerBank」の場合、充電ハブとなる公共レンタサイクルが「様々な場所に存在する」「アクセスはしやすいものの目立ちにくい場所にある」ことから、いつでも好きな場所で人目を気にせずに充電ができるようになる。さらに、自分のデバイスを所持することによって、ホームレス状態の人々が主体性や自立性を持つことができ、エンパワーメントにもつながるのではないか、とタルボット氏は考えている。

公共レンタサイクルを充電ハブに──何かを新たに作り上げるのではなく、すでにあるものを活用する「My PowerBank」は、まさに街を「ハック」して問題解決につなげるユニークなアイデアと言えそうだ。

Ohyoon Kwon, Annemiek van Boeijen Co-designing an SMS service for London’s homeless people Considerations for designers engaging with a vulnerable user group (2012)

【参照サイト】My Powerbank + All the Time luke talbot
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