フィンランドの小都市ラハティ、数年でカーボンニュートラル達成へ

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日本・英国・EU諸国など、多くの国が「2050年までに」カーボンニュートラルとなることを目指している。しかしながら、現在の温室効果ガス排出量を考慮すると、これらの目標を達成するには大きな労力が必要だ。そんな中でも、フィンランドでは国全体が「2035年までに」カーボンニュートラルを達成することを目標としている。そのフィンランドにある小さな都市が、なんと2035年を待たず、数年以内にカーボンニュートラルを実現する見込みだという。

それが、首都ヘルシンキから電車で北西に1時間ほどの場所にある、人口12万人の小都市・ラハティ市だ。同市は2019年の時点で「2025年までにカーボンニュートラルを達成する」という野心的な目標を設定した。ラハティ市の環境局長であるエリナ・オヤラ氏によると、市はその目標を達成するのに予定より1〜2年遅れる可能性が高いというが、それでも他都市と比べるとかなり早い段階でカーボンニュートラル都市になる見込みだ。これまでのところ、ラハティ市は温室効果ガスの排出量を1990年のレベルより64%削減したと試算している。

「欧州グリーン首都賞2021」も受賞しているラハティ市は、1970年代から環境活動に力を入れており、特に急速な工業化で汚染されたヴェシヤルヴィ湖の浄化作業からその取り組みを始めた。かつては工業都市だったラハティ市は、どのようにして環境に優しい都市へと変貌を遂げたのだろうか。その具体的な施策を、今回の記事では「廃棄物」「交通」「エネルギー」「文化」の側面から見ていく。

地元も人も、回収業者も嬉しい。ごみを減らす「ある」方法

まず、「廃棄物」の観点。ラハティ市は、「2050年までにごみのない都市になる」という目標を掲げ、家庭ごみの99%をリサイクルすることに成功し、温室効果ガス排出量を70%削減している。また、地域の人々が古くなった衣料品をボックスに袋一杯入れると、地元のカフェや、プールで使える引換券がもらえるというユニークな仕組み「The Textile Deposit pilot scheme(テキスタイル・デポジット試験制度)」などもある。

フィンランド、地域で使えるギフト券と交換で衣服リサイクル率を5倍へ

さらに、ラハティにあるビール醸造所「ANT BREW」が、「Wasted Potential」と題し、住民を悩ませているという公園のガチョウの糞を使って地ビールを開発したことも話題を呼んだ。この事例からは、創造性を発揮すれば、あらゆる廃棄物をユニークに再利用し続けることができるのだと人々は学んだだろう。

移動手段をエコに。市民が“参加したくなる”アプリ

交通」に関して市民の巻き込み方も上手い。最も革新的な取り組みの一つが、「CitiCAP」という個人の炭素取引モデルを用いたモバイルアプリだ。これは、利用者がエコな交通手段を選択すると報酬がもらえるというもの。市民はこのアプリを通じて、週のCO2排出限度を設定し、それを守ることでバスチケットや地元製品の割引などを得ることができる。

エコな交通手段で報酬がもらえる「CitiCAP」フィンランドの環境先進都市によるモビリティ活用

また、市内の移動においては、公共交通機関、自転車、徒歩が51%を占める。雪が降ったときは、移動手段としてスキー板を貸し出す「スキーシェアリング」などユニークな試みも行っていた。

エネルギー」の観点では、市は市営アパートの建物を改修してエネルギー効率を高め、太陽光発電を設置している。ある発電所では、市は下水処理からの廃熱を利用して地域暖房システムにエネルギーを送り込んでいるという。さらに、石炭の使用を2019年に完全に止め、代わりにリサイクル燃料や地元の認証された木材を使用したバイオエネルギー施設からの熱を利用している。

アクションの進歩を市民に「見える化」し、モチベーションを高める

文化面」では、ラハティ交響楽団が世界で初めてカーボンニュートラルな交響楽団を目指し、活動におけるCO2排出量やエネルギー、水、廃棄物などを管理している。

また、ラハティ・ペリカンズというアイスホッケーチームも世界初のカーボンニュートラルクラブを目指し、他の都市での試合への飛行機移動の中止や、ファンに試合会場に来る際は徒歩、自転車、または公共交通機関を利用するよう促している。これらの組織の取り組みは、市の持続可能性に対する全体的な姿勢を象徴しているといえる。

世界初、カーボンニュートラルを目指すフィンランドのホッケーチーム

ラハティ市は、カーボンニュートラルに向けたこうしたアクションを、113以上行っているという。各プログラムの進捗状況を追跡するために、ソフトウェアプラットフォーム「Kausal」を使用し、市の組織全体で活動を共有しながら、それぞれに担当者を割り当てている。そしてこれは一般にも公開されているため、市民が都市の変化を確認し、モチベーションを高める上で重要な要素となっているのだ。

ラハティ市が設定した野心的な目標は、単なる理想ではなく、具体的な進歩へと結びついている。これらのプロセスは、地域社会の力がいかに大きな変化を生み出すことができるかを、私たちに示している。

【参照サイト】This small Finnish city will be carbon neutral in just a few years
【参照サイト】Lahti
【参照サイト】GOOSE DROPPINGS IN BEER BREWING – THIS FINNISH GREEN CAPITAL TAKES CIRCULAR ECONOMY TO THE NEXT LEVEL

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