セールシーズンに、買う“以外“の選択肢を。脱消費を促す企業キャンペーン5選

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ブラックフライデーセールが終わったと思えば、クリスマス・年末年始セールや、福袋。

毎年当たり前のようにやってくる大消費キャンペーンに、違和感を覚える人も少なからずいるのではないだろうか。中には「気になっていたグッズが安く購入できるかも?」と少し惹かれる気持ちと「そうはいっても不要な物を買って無駄にしてしまったら?」と踏みとどまる気持ちの狭間で揺れているという人もいるかもしれない。

こうした売上至上主義のキャンペーンを疑問視する企業などによって、むしろ必要以上の消費を促さないようにする動きがヨーロッパを中心に広がっている。例えば、あえて店舗を閉めてセールを行わない、セールに使うマーケティング予算を環境保護団体に寄付する、リサイクルを促すワークショップ・イベントを開催するなどのアクションだ。

近年日本国内でも少しずつ広がりつつある買う「以外」の選択肢。特別セールが活発になるこの時期だからこそ、本記事ではそうした新しい形の消費を提案する企業の取り組みをまとめて紹介していく。改めてライフスタイルや日々の選択を見つめ直すヒントが得られるかもしれない。

ホリデーシーズンに消費以外の選択肢や新たな視点を提供する、企業の取り組み5選

01. 割引は行わず、製品の耐久性と長寿命を強調する。Fjällrävenの「Long Term Investment Friday」

スウェーデンのアウトドア・アパレルブランドであるFjällräven(フェールラーベン)は、ブラックフライデーセールの代わりに、独自のキャンペーン「Long Term Investment Friday(長期投資の金曜日)」を採用した。

本キャンペーンでは、製品の割引は行わず、代わりに「長く使える製品ほど、交換する必要が少なくなる」というメッセージを訴えかける。有害な化学物質、資源を多く消費する素材、動物虐待、短期的なトレンドにノーを突きつけ、自社製品の耐久性と長寿命を強調したものだ。

同ブランドは、期間中に限らず常時、自社HPで、自社製品のケアとリペアのガイドを出しており、お気に入りのものを大切にし、長く愛用していくためのサポートを提供している。

【参照サイト】LET’S CALL IT LONG-TERM-INVESTMENT FRIDAY INSTEAD
【参照サイト】LOVE YOUR GEAR LONGER

02. ブラックフライデーのマーケティング予算を自然保護活動へ寄付する、Montaneの取り組み

 

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イギリスのアウトドアブランド「Montane(モンテイン)」は、自分達の製品が役割を果たす舞台である大自然を守ることにコミットするため、ブラックフライデーの割引を廃止した。そしてブラックフライデーのためのマーケティング予算を、ユネスコ世界遺産であるイギリス・湖水地方の保護と浸食の低減に取り組む団体「Fix the Fells(フィックス・ザ・フェルズ)」に寄付している。

また、2023年9月には、商品購入時にFix the fellsの活動に寄付ができるオプションを加えており、ブラックフライデー期間に限らず、湖水地方を将来世代が楽しめる場所として保全していくための支援に参加することが可能だ。

【参照サイト】Our Commitment: Fix The Fells

03. セール期間はあえてショップを閉鎖?消費の代わりに自然に触れる機会を提供する、Dille & Kamilleの取り組み

 

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社会や公益のための事業をおこなっている企業に発行されるB Corp認証を取得しているオランダの生活雑貨ブランド「Dille & Kamille(ディル & カミーユ)」は、2023年11月24日を「グリーンフライデー・自然を大切にする日」とし、オランダ、ベルギー、ドイツのすべての店舗とオンラインショップを閉鎖した。

当日は、オランダ食糧林業財団と協力し、オランダ国内16か所のフードフォレストへの植林支援を行った。フードフォレストとは「食べられる森」とも言われ、地域の土地を有効活用し、果樹や野菜などを育てる、持続可能な農業を目指す取り組みのことだ。

さらに、公式HPを訪れた人に対し、ビーチクリーン、自然保護活動など、様々な方法で自然に関わることができる団体や取組みを紹介。また、庭の自然を使ってクリスマスツリーを作る方法や、庭の生物多様性を高めるヒントなど、家でできる取り組みのガイドを詳細に提供している。

【参照サイト】Green Friday bij Dille: wij gaan naar buiten! Jij ook?
【関連記事】食糧危機や、食品ロス解決のヒントになる世界の事例7選【2022年の最注目アイデア】

04. 古くなった服や色あせた服を黒く染め直し、衣類の寿命を延ばす。Citizen Wolfの染色キャンペーン

 

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2000年頃に比べて私たちが購入する服の量は60%増えた一方で、廃棄する前に着用する期間は半分に短くなっているというデータがある(※1)。さらに、オーストラリアでは国民の24%が過去1年間に1回着ただけで服を捨ててしまっているという(※2)

服が大量に買われ短期間で捨てられている現状を変えようと立ち上がったのが、B Corp認証を取得している同国のファッションブランド「Citizen Wolf(シチズン・ウルフ)」だ。

同社独自の調査によると、5人に1人が「色あせた」という理由でブラックジーンズを捨て、平均して一人当たり年間23キロのテキスタイルが埋め立てられているという。そこで、同社はブラックフライデーの期間に「Black Fridye(黒に染める)」キャンペーンを打ち出した。古くなった服や少し色褪せてしまい着なくなったお気に入りの服などを黒く染め直すことで、新たな命を吹き込むというコンセプトだ。自社ブランドに限らず、あらゆるブランドのあらゆる色の衣服が対象だ。

本キャンペーンは、染色によって製品寿命を延ばし、水とCO2の節約に貢献することを目指している。実際、同社によると、前年のキャンペーンでは、未使用の生産と比較して240万7,948リットルの水を節約、新しい衣服を購入する場合と比較した場合の二酸化炭素排出量の平均95%の削減に成功したそうだ。

【参照サイト】Black Fridye by Citizen Wolf
【参照サイト】WEAR YOUR VALUES THIS BLACK FRIDYE.

05. オンラインストアと実店舗のレジを閉鎖し、会員にバッグを無料貸し出し。Freitagの「買わずに借りて」キャンペーン

 

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2022年のブラックフライデー期間中には、ヨーロッパ中の倉庫や店舗に荷物を輸送するトラックによって、平均的な週よりも94%多い120万トンのCO2が大気中に放出されると予測されていた(※3)。また、購入された製品の80%は埋め立て地に送られるか、非常に短い寿命で焼却されるとも言われている(※4)

スイス・チューリッヒに本拠地を置く「FREITAG(フライターグ)」は、人や自然に負の影響を与えているブラックフライデーの大量消費に明確に「NO」と声を上げ、期間中「Don’t buy, just borrow(買わずに借りて)」キャンペーンを展開した。

名前の通り、期間中は、オンラインストアも店舗も閉鎖し、商品を購入することができなくなる。その代わりに、会員はFREITAGの店舗で30種類の中から好きなバッグを無料で最長2週間借りることができる。

本キャンペーンによって、行きすぎた消費主義を抑制し、「買うよりも借りる、所有するよりも利用する」という選択肢と気づきを提供することで、フェアな形のサーキュラーエコノミーを目指しているという。

【参照サイト】FREITAGはブラックフライデーにノーを掲げます

「脱消費」の動きは国内でも?

日本国内でも風物詩のようになったブラックフライデーセールや、年末年始セール、福袋などの大量消費を促す企業キャンペーン。

一方で、今回紹介した事例のように、売上最優先で消費を掻き立てる企業キャンペーンに一石を投じる動きは、国内でも出始めている。例えば、一般社団法人シェアリングエコノミー協会は、「今一度その消費について立ち止まって考えてほしい」という思いから、傘のシェアリングサービスを運営するアイカサや食品ロス削減サービスを運営するTABETEなど、同協会のシェアサービス事業者16社と連携し、サステナブルな選択肢の1つであるシェアサービスを世の中へ提案する「シェアエコグリーンフライデー」プロジェクトを行なっている。2023年は、11月20日から24日までの5日間、各社のサービスロゴをグリーンに変更し、サステナブルな選択肢について考える機会を提案するとともに、グリーンフライデー当日まで、各所で発信や啓発活動を展開した。

あらゆる消費キャンペーンが活発になる時期だからこそ、改めて、生活者である私たち一人ひとりも受け身ではなく、自分の意識的な選択を通して、作りたい社会や実現したい未来を振り返ってみることが重要ではないだろうか。

※1 Style that’s sustainable: A new fast-fashion formula (McKinsey Sustainability)
※2 Fast fashion: Three in ten Aussies have thrown away clothing after wearing it just once (YouGov)
※3 Black Friday exposes dark side of trucking (Transport and Environment)
※4 Most Black Friday purchases soon end up as waste (Phys.org)
【参照サイト】シェアサービス16社がロゴをグリーンにチェンジ!グリーンフライデーに合わせ、“シェアでサステナブルな消費の選択肢” を業界協働で推進
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