バンクーバーの公園に「植民地監査」。多文化共生の足がかりになるか

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世界中どこにでもある、公園。「普段行っている公園がどんな歴史を辿ってきたか」と考えたことはあるだろうか。子どもから高齢者までが集い、自然とも触れられる公園は、誰にとっても身近で必要な場所だ。しかしながら、公園がある土地の歴史や所有者について気にかける人はあまりいないのではないだろうか。

カナダのブリティッシュコロンビア州、バンクーバーの北西沿岸に位置する「スタンレーパーク」は北米最大級の都市公園だ。総面積400ヘクタールの広さを誇る公園は周りを海に囲まれ、園内には美しい自然と、水族館やカフェをも有する。

そんなスタンレーパークには史上初の「植民地監査」が誕生し、土地の歴史を調査、報告しているという。公共の屋外施設に監査が置かれた理由と彼らの目的とはいったい何だろうか。

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今スタンレーパークと呼ばれているこの土地には、もともと先住民族であるxʷməθkʷəy̓əm (ムスキーム)、Sḵwx̱wú7mesh (スカーミッシュ)、səlilwətaɬ (ツレイル) の人びとが暮らしていた。しかし、1859年に石炭掘削のために政府の管轄になり、さらに1871年に、バンクーバーがあるブリティッシュ・コロンビア州がカナダ連邦に加盟したことで、半島を含むすべての軍用地は連邦政府の管理下に置かれたのだ。

その後、バンクーバー市が政府に要望書を提出し、1888年に今の形である公共の公園として開園。目まぐるしい変化の中で、先住民族たちは強制的に立ち退きや、領土の一部の保護区への移動を余儀なくされた。

驚くべきことに、現在もこの土地の所有権は先住民である彼らが保持しており、バンクーバー市も公園の敷地が未割譲の伝統的領土であることを認めている。その背景には、カナダが多文化・多民族・多言語社会であることや、バンクーバーが2014年に世界で初めて「和解の都市(※)」を宣言したことにも大きく関係しているだろう。同市は、この公約の中で都市部の先住民族の権利を尊重し擁護することを宣言している。

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スタンレーパークにおける植民地監査の目的は、市が運営する公園やレクリエーションサービスの意思決定と資金配分が、先住民族をいかに排除してきたかを、体系的かつ客観的に文書化することだ。自身もカナダの先住民族のハイダ族であり、バンクーバー市の公園管理委員会内の先住民主導グループの中核を担うレナ・ソウター氏はReasons to be Cheerfulへのインタビューで以下のように語っている。

特定の何かを強調して「これは悪いことで、なくさなければならない」と言うつもりはありません。ただ「これが私たちがここにたどり着いた経緯だ」と伝えるだけです

彼らの「和解」の目標は、バンクーバー市内の先住民族と非先住民族の間で相互に敬意を持った関係を保ち、地元の先住民族と都市部の先住民族の権利を尊重することだ。そして和解はゴールではなく進行中のプロセスであるという。今後の調査結果報告書には、政策提言を行う公園委員会の植民地解放戦略の準備を整えるためのデータや事例研究が含まれる予定だ。

現在、世界中で土地をめぐる争いが起きている。歴史や宗教、政治の問題が複雑に絡み合い、未だ終息の糸口が見えない。しかしどんな理由であっても暴力的な方法や一方的な主張で、人々の住む場所や土地の権利を脅かされることはあってはならない。

私たちが同じ地球で生きていくために必要なことは、奪い合いではなく、お互いを知り尊重し合うこと。公園で過ごすときの穏やかな気持ちで、解決への道すじを探っていけないものだろうか。

City of Vancouver HP
【参照サイト】Reasons to be cheerful「Do Your City’s Parks Need a ‘Colonial Audit’?
【参照サイト】park people HP
【参照サイト】Chartered Professional Accountants of Canada (CPA Canada)
【参照サイト】植民地監査の報告書2022
【関連記事】建築の背景にある植民地主義に向き合う。イギリスの”不快な”街歩きツアー

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