「こんな働き方したい!」勤労感謝の日に見る、従業員の心を掴んだワークライフバランス事例

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明日11月23日は勤労感謝の日。すべての働く人々への感謝と、労働の尊厳を称える機会だ。しかし仕事をしている人々がみな健康的に働けているかというと、まだ理想には程遠いと感じる人も多いだろう。

近年「ワークライフバランス」という言葉をよく聞くようになった。働くことは生活の一部であり、私たちのアイデンティティを形成する重要な要素でもある。しかし、過度な労働は心身の健康に悪影響を及ぼす。そのため、労働と私生活のバランスを上手に取ることは、生活の質全体を向上させるために不可欠だ。

勤労感謝の日にちなんで、今回は世界の企業がどのようにしてワークライフバランスを促進し、社員の幸福と生産性を高めているかを見ていきたい。ここで紹介する事例が、新しい働き方を模索する上でのヒントになるかもしれない。

「ワークライフバランス」を保つための、企業のユニークな制度5選

01. もう会社の本社がある国に住む必要なし「Team Anywhere」

オーストラリアのソフトウェア企業であるAtlassianは、社員に居住地と勤務地を選択する自由を与える制度「Team Anywhere」に取り組んでいる。この取り組みは、社員が家族との時間や、個人的な目標達成に向けての時間を大切にできるようにと始まったものだ。

取り組みが始まってから、これまで引っ越しをした社員は300名以上。例えば、サンフランシスコに住むとある社員は、従来の通勤の時間を13歳の犬と一緒にビーチで過ごすことができていたり、シドニー郊外に暮らす社員は家族との時間を増やすことができたりするようになったという。下記の動画は実際の社員であるクリスティーナさんの物語だ。彼女はこの制度が使えるようになってから、ニュージーランドの祖母の近くに移住したという。

【参照サイト】Atlassians are on the move as our people embrace Team Anywhere

02. 会社が旅行予算を提供?有給休暇が無制限の企業も

もし会社が休暇中の旅費まで出してくれたとしたら……仕事をより一層頑張ろうという気持ちになるかもしれない。

そんな夢のような制度を導入している企業の一つが、米国クラウドサービス大手のEvernote(エバーノート)だ。Evernoteは社員に年間1,000ドル(約15万円)の旅行予算を提供している。この予算は、社員が自分たちの好きなように生活を楽しむためのものであり、無制限の有給休暇とともに提供される​​。

さらにもう一つ、SEOツールを提供するMoz(モズ)という企業も社員に年間3,000ドル(約45万円)の旅行予算を提供している。この予算は、21日間の有給休暇、10日間の祝日、そして7日間の病気休暇とともに付与される。

これらの企業では、社員がプライベートで充実した時間を過ごすことで、結果として職場での生産性や仕事への満足度の向上につながると考えられているのだ。

【参照サイト】Why Our Company Pays Employees $1000 to Use Their Vacation Time
【参照サイト】What is an employee travel stipend?

03. 社員にメンタルヘルスツールを提供。社長も「ストレス」を大っぴらに話す!

ソーシャルメディアツールを提供する米国のBuffer(バッファー)社が始めた「メンタルヘルスイニシアチブ」は、社員の精神的健康をサポートするための取り組みだ。このイニシアチブの一環として、Bufferの創業者であるJoel Gascoigneは、自分自身のストレスや管理方法についてSlackを通じて社内で公開しており、社内でメンタルヘルスに関する議論を盛り上げている。これにより、社員はメンタルヘルスについて話し合い、健康的な職場環境を作り出すことができるという。

さらにBufferでは、職場でのマインドフルネスに関する任意のトレーニングを提供。すべての社員と業務委託パートナーには、メンタルヘルスの管理に役立つ感情的健康ツール「AbleTo」の無料サブスクリプションが提供されている。

【参照サイト】Introducing the Unsick Day

04. 4年間勤務した社員に対し、1ヶ月の有給サバティカル休暇

サバティカル制度をご存知だろうか。サバティカル制度とは社員が仕事から離れて自己啓発、休養、家族との時間、旅行、趣味、ボランティア活動などに時間を費やすことができる長期休暇制度のことを指す。

ヘルプデスクソフトウェアのプロバイダーである米国企業・Help Scout(ヘルプスカウト)は、4年間勤務した社員に対して1ヶ月のサバティカル休暇を提供している。このワークライフバランスを促進する取り組みは、2019年にCEOのニック・フランシス氏が実際にサバティカル休暇を取得し、個人の生活およびビジネスへの利点を実感したことがきっかけで生まれた。

社員のサバティカル休暇取得促進のために、Help Scoutは社員が勤続4年を迎えた後の12ヶ月以内に1ヶ月間の有給休暇を取得するよう規定している。さらに、会社はこれらの従業員に2,500ドル(約38万円)のボーナスを提供し、サバティカルを最大限に活用するための支援をしているそうだ。

【参照サイト】Sabbaticals in the Real World: How Help Scouters Are Using Their Time Away

05. 夏の数ヶ月間、金曜日の午後は「自分を整える時間」に

Image via Shutterstock

カナダのSNSマネジメント会社・Hootsuite(フートスイート)の「メンタルヘルスイニシアチブ」は、新型コロナのパンデミックによって浮き彫りになったメンタルヘルスの重要性に対応するために始められた。このイニシアチブの中心となるのは、全社を通して1週間の休業を実施することだ。

そして、短期的な休暇だけではワークライフバランスを保てないと考えた同社は、金曜日を半日休業する「Owly Quality Time(直訳すると、フクロウの質の高い時間)」を導入した。これは、南半球では1月〜3月、北半球では7月〜9月に行われ、従業員がリフレッシュやプライベートな時間を充実させることを目的に、「少し長めの週末」を過ごすことができる制度だ。

【参照サイト】We’re Shutting Down the Entire Company for a Full Week—Here’s Why

まとめ

仕事が好きな人がいるのはいいことだ。しかし、私たちは生きるために働いているのであり、仕事のためだけに生きているわけではない──そうした認識が、徐々に社会で広がってきたのもたしかだろう。仕事のために心身を犠牲にすることは、次第に時代遅れのものになりつつある。

今回紹介した事例を明日から導入するのは難しいかもしれない。ただ、これらの企業は従業員の健康を守り、より良いワークライフバランスを促進するために取り組むべき方向性を示していると言えるだろう。

勤労感謝の日に合わせて、いま一度身の回りの状況をゆっくり振り返ってみるのはいかがだろうか。

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