2024年の夏も暑い日が続いている。冷房を使ってエネルギーを消費しながら「これでまた地球温暖化が進んでしまう」とモヤモヤしている人も多いだろう。
国際エネルギー機関によると、世界の電力消費量のうち、エアコンや扇風機が10%を占める。今後もエアコンの需要は増えると考えられており、2050年までには、世界の約3分の2の世帯がエアコンを持つようになる見通しだ(※) 。皆が夏を快適に過ごしながら、環境への負荷を減らせる方法はないだろうか。
アメリカ・コロンビア大学のチロン・チェン氏が率いる研究チームは2024年8月、冷房によるエネルギー消費量を抑える方法として、建物の外壁をジグザグ状にすることを提案した。ジグザグ状の壁は、平らな壁よりも建物を冷やせる可能性があるというのだ。
ジグザグ状の壁は、空のある方向を向く面と、地面のある方向を向く面を組み合わせてできている。ジグザグが非対称であることも特徴だ。放射冷却という現象を活用することで、建物を冷やそうと試みている。
放射冷却とは、ものが外へ熱を出して(放射して)冷えることを指す。すべてのものが持っている性質であり、たとえばやかんでお湯を沸かし、火を消して置いておくとやかんが冷めることも放射冷却だ。
ジグザグ状の壁では、空のある方向を向く面が赤外線を放射し、地面のある方向を向く面が赤外線を反射することで、壁の放射冷却効果を最大化させる。一方の面が外へ熱を出しながら、もう一方の面が、熱い地面から受け取る熱を減少させる仕組みだ。地面のある方向を向く面には、たとえば金属フィルムを使うことが考えられている。
研究チームによると、これまで建物の屋根については、放射冷却を活用して成功した事例が多く存在したという。しかし壁は、低温の空気と熱い地面の両方に接しているという困難さがあるため、放射冷却を活用しにくかった。そこで、空気と地面のそれぞれに対応するために異なる面を作るというユニークな発想にいたったという。
ジグザグ状の壁は、放射冷却塗料を塗った平らな壁と比べて、1日の平均気温を2.3℃下げることができる。また、この壁は、地面の温度が高い温暖な地域でより使いやすく、高い建物より低い建物に使うほうが適しているそうだ。すでに建っている建物の場合でも、その平らな壁にジグザグ状の壁を取り付けることができるという。
住まいの暑さ対策として、できるだけ長い時間カーテンを閉めたり、日よけシェードを取り付けたりしている人は多そうだが、今後、こうした建物の形を変えるアイデアも多く生まれるかもしれない。
※ The Future of Cooling – Analysis – IEA
【参照サイト】Nexus: Nexus
【参照サイト】Zigzag patterns on walls could help cool overheated buildings, study finds | Extreme heat | The Guardian
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