オランダのハーグ市が、化石燃料関連の屋外広告を全面禁止する条例を可決した。このような規制が法的に施行されるのは世界初となる。この条例は、ガソリン車やクルーズ船、航空旅行など、化石燃料に依存する製品やサービスの広告を禁止するもので、街頭の看板やデジタルサイネージ、公共の広告スペース全てが対象となり、2025年1月1日から発効となる。
今回のハーグ市の動きが他の都市の取り組みと異なるのは、単なる宣言や覚書ではなく、法的拘束力を持つ点にある。違反した場合には法的措置が取ることができるようになるなど、広告規制が実効性を持つこととなる。
オランダで広告の「脱化石燃料」を目指すFossil Free AdvertisingのMartine Doppen氏によると、近年、世界中の25の自治体で化石広告を廃止する動議が可決されたという(※)。ハーグはそれを実際に実施した最初の都市となる。
例えば、オランダのアムステルダム市では、2021年に地下鉄駅の広告スペースで化石燃料関連製品・サービスについての広告が禁止された。一方で、これは地下鉄駅の広告運営業者との契約にとどまっており、法的効力を持つものでもないため、影響範囲が限定的であった。
アムステルダムの隣・ハーレム市は、2022年に、特に環境負荷が高い化石燃料関連製品・サービスや肉類に関する広告を禁止する動議が可決され、「肉の広告禁止」を導入した世界初の都市として注目を集めた。2025年1月から施行予定だが、禁止措置はアムステルダム市と同様に広告業者との契約に限定されている。
イギリス・エディンバラ市やシェフィールド市も広告禁止法案を可決しているが、具体的な施行には至っていない。これらの都市では、表現の自由に対する懸念や企業からの反対が実施を遅らせている。フランスでも2022年に一部の化石燃料広告を禁止する法律が施行されたが、その範囲は限定的で、全ての化石燃料関連広告を対象としているわけではない。
広告は多額の利益をもたらすため、利害関係者からの反発は根強い。
実際に今回のハーグ市の決定についても、野党から幅広い批判を受けながらも、最終的には賛成24票、反対21票という僅差で可決された。この動きは、国連事務総長アントニオ・グテーレスの呼びかけにも応える形であり、今後他の都市が追随する可能性が高い。カナダのトロントやオーストリアのグラーツなどでも同様の法律が検討されており、ハーグ市の動きが国際的な規制モデルとして影響を与えると見られている。
広告は、リスクや害のある事実に対する一般の理解を歪める要因にもなりうる。それらを法律で取り締まり、製品・サービスへの消費喚起に歯止めをかけることは、気候危機を食い止めることにもつながるだろう。
オランダでは、航空会社の割引キャンペーンや豪華客船によるクルーズなどが広告から締め出される日も近いかもしれない。広告スペースは今後、よりクリーンなエネルギー技術への投資を促し、化石燃料に依存した消費を減らすために活用されていくだろう。広告・クリエイティブ産業は、こうしたクリーンな社会経済をつくるための、文化醸成という大きな役割を担うのだから。
※ Zwolle gaat reclame voor verre vliegreizen toch niet verbieden
【参照サイト】Wereldprimeur in Den Haag: eerste stad zonder fossiele reclame
【参照サイト】Gemeente Den Haag verbiedt fossiele reclames in openbare ruimte
【参照サイト】UN chief calls on governments to stop fossil fuel ads: Where are they already banned?
【参照サイト】Zwolle gaat reclame voor verre vliegreizen toch niet verbieden
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Edited by Megumi