【2024年グッドアイデア】「全員女性」議会の誕生に、気候変動裁判での勝訴。女性のエンパワーメント事例5選

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2024年に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数」において、日本は146か国中118位となり、2023年の125位から7つ順位を上げた。これには、2023年9月の内閣改造で女性閣僚が5人に増加し、政治分野のスコアに反映されたことが影響しているという(※1)

一方世界でも、6月にはメキシコでクラウディア・シェインバウム氏が同国初の女性大統領に(※2)、イギリスでは7月の総選挙後、レイチェル・リーブス氏が女性初の財務大臣となるなど、女性政治家の躍進が注目された(※3)

IDEAS FOR GOODではそうした政治分野での女性の活躍や、ジェンダーギャップ解消に繋がる社会の動きや取り組みを取り上げてきた。今回の記事では、2024年に紹介した女性をエンパワーメントするニュースのなかから5つを紹介していきたい。

世界の女性エンパワーメント事例5選

01. 気候危機への対策不足を訴えたスイスのシニア女性グループが、裁判で勝訴

スイスのシニア女性グループが、歴史的勝訴。気候危機への対策不足は「人権侵害」

これまでで最も暑い1年となった2024年。気候変動の影響を受けない人はいないが、女性は男性と比べ、災害や気候変動の影響で生計を失ったり死亡する割合が高いという。

そんな中、2024年4月、スイスのシニア女性グループ「KlimaSeniorinnen」が、気候変動対策の不十分さを理由にスイス政府を訴え、欧州人権裁判所で勝訴を果たした。グループを構成するのは70代を中心とする女性たちで、気候変動による熱波が健康を脅かすとして訴訟を提起。裁判所はスイス政府の排出削減目標が市民の人権を侵害していると判断したのだ。

女性、それもシニア世代のこうした動きは、特に草の根で活動する女性たちにとっての大きな希望となるだろう。

02. 気候変動対策に潜むジェンダー不平等を可視化するアプリ

「意思決定プロセスに女性はいますか?」気候変動対策に潜むジェンダー不平等を可視化するアプリ

前述の通り、女性は男性と比べ気候変動の影響を受けやすいと言われている。そうした背景もあってか、女性議員が増えると厳格な気候政策が採用されやすくなるという研究結果もある。つまり、女性の声を政治に反映させることが、気候変動の解決の鍵となるかもしれないのだ。

こうした背景を受けて登場したのが、気候変動対策におけるジェンダー平等をデータで「見える化」するアプリ、「ジェンダー気候トラッカー」だ。

アプリでは、UNFCCC(気候変動に関する国連枠組条約)においてジェンダー平等に関連する決定事項をまとめた報告書、2008年から現在までの気候変動外交における女性参加に関する最新情報、各国がジェンダーと気候対策にどのように取り組んでいるかを評価した国別のプロファイルを見ることができる。

行き過ぎた資本主義や、それを前提とする社会が引き起こしている気候変動。一刻も早く解決していくために、女性の力は今後より強く求められていくだろう。

03. 米・ミネソタで、州史上初「全員女性」の議会が誕生

米・ミネソタで誕生した、州史上初「全員女性」の議会

政治の世界では、未だ男性が圧倒的に多い。例えば、2024年11月時点の日本の国会議員に占める女性の割合は、20%に満たない(※4)。徐々に割合は高まってきているものの、政治の世界でのジェンダー平等実現までの道のりはまだまだ遠そうだ。こうした課題は、アメリカにも存在する。

そんな中、2024年1月、アメリカ・ミネソタ州セント・ポール市議会で「女性だけ」で構成される史上初の議会が誕生した。新議会は40歳以下の若手女性7名で構成され、イラン移民の家族を持つメンバーや、Hmong難民の背景を持つメンバーなどが名を連ね、「セント・ポール史上最も多様性ある議会」と評された。政策では、安全な住宅供給や公共交通の改善といった身近な地域課題のほか、気候変動対策にも力を入れていくという。

もちろん、政治家が全員女性になれば良いということではない。しかし、全員女性の議会の誕生は、男性中心の政治に疑問を投げかけ、政治の世界のジェンダーバランスに対する変化を感じさせる一歩となったのではないだろうか。

04. 米・歴史博物館が開催した、Wikipediaに女性のページを増やす執筆イベント

Wikipediaに女性のページをもっと。米・歴史博物館が記事執筆イベントを開催

政治運動、研究、文化活動……いつの時代も、さまざまな分野で活躍する女性たちがいた。しかし、そうした女性たちの活躍は後世に十分に伝わっているとは言えない。実は、英語版ウィキペディアにおいて、女性に関する伝記が全体の20%にも満たないのだ。これは、ウィキペディアの投稿者の大半が男性だからだという。

そうした現状を改善すべくスミソニアン・アメリカ女性歴史博物館が行なったのが、「ウィキペディア・エディット・ア・ソン」だ。隠れた女性の功績を掘り起こし、記事作成や編集を促進する取り組みで、日系アメリカ人アーティストの日比久子やポリオワクチン開発者のイザベル・モーガンなど、歴史に埋もれた女性たちの物語を紹介するデジタル展示「Becoming Visible」が行われた。

参加者は、歴史上の人物であるアメリカ人女性に関するウィキペディア記事を編集・作成することを推奨された。ウィキペディアでの記事作成が初めてという人のために、1時間のガイダンス講座も行われたという。

忘れられていた女性たちの功績が可視化されることで、今を生きる女性たちの可能性が広がるだろう。男性の名前ばかりが並ぶ歴史の教科書も、変わっていくかもしれない。

05. ロンドンの鉄道路線が、女性や移民の活躍を讃える新名称を発表

ロンドンの鉄道路線に新名称。女性や移民の活躍を讃える

ジェンダーギャップは、私たちが普段何気なく目にする言葉や名称の中にも埋め込まれている。そのひとつが、路線名だ。

2024年初頭、ロンドンの公共交通「オーバーグラウンド」で新たに命名された6路線の名称が注目を集めた。女性、移民、LGBTQ+など、これまで見過ごされがちだった人々の功績や文化を讃える意味が込められたのだ。

例えば、女性の参政権(投票権)を求める運動のメンバーだった人々「サフラジェット」に由来する「The Suffragette line(サフラジェット・ライン)」、2022年のUEFA欧州女子選手権で優勝した「ライオネス」サッカーチームの名称に由来する「The Lioness line(ライオネス・ライン)」など。そのほかの路線にも、移民やLGBTQ+コミュニティに由来する名前がつけられた。

こうした動きは実際の暮らしやすさには直接的に影響を及ぼさないかもしれない。しかし、男性中心にデザインされがちな都市において女性の存在を思い起こさせることは、長い目で見た時に女性やマイノリティの声が反映されるまちにつながっていくのではないだろうか。

まとめ

いかがだっただろうか。2024年は、気候変動や政治の世界などで活躍する女性たちのニュースを、数多く目にすることができた。ジェンダーギャップ指数には反映されなくとも、女性の活躍や社会の小さな変化は世界中で起こり始めているのだ。2025年も女性に関する新たな動きを目にするのが、楽しみだ。

※1 【ジェンダーギャップ指数】日本、2024年は世界118位で低迷続く 政治・経済に課題
※2 メキシコ大統領選 与党候補シェインバウム氏勝利へ、初の女性大統領
※3 【2024年女性大臣の日】リーダーシップを発揮して、世界をけん引する注目の女性たち
※4 日本の国会議員の女性比率

【参照サイト】<報告書発表> 女性の平等達成は5世代先 しかし歴史的な選挙イヤーが希望をもたらす
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