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スイス西部、標高およそ1,000メートルに位置する町ラ・ショー=ド=フォン。この高地のまちで、ヨーロッパでもっとも高所にある都市型「エディブルフォレスト(食べられる森)」が誕生した。
2023年、激しい嵐がラ・ショー=ド=フォンを襲い、多くの街路樹が倒壊した。気候変動の影響が山岳地域にも及び、都市の生態系がもろさを露呈した出来事だった。失われた緑をどう取り戻すか。単なる復旧ではなく、これからの気候に“適応する”森をつくるという発想が生まれたのだ。
このプロジェクトは、市が所有するパドック公園内に設置された。自治体が土地を提供し、地域団体・Les Jardins du Mycélium(ミセリウムの庭)、自然保護団体・Pro Natura、そして市民ボランティアが協働して進めている。
2032年までに900本以上の樹木と低木が植えられる予定で、すでに市民参加型の植樹イベントも開催されている。ハーブやベリーなどの食べられる低木も加わることで、誰もがアクセスできる「食の森」として機能していく計画だ。
ラ・ショー=ド=フォンは、冬の積雪や晩霜が今も続く冷涼な地域である。地球温暖化が進んでいるとはいえ、枝折れや凍害のリスクは残る。そこでこの森では、リンゴ、クルミ、スモモ、ナシなどの果樹を中心に、「今の気候にも、これからの気候にも適応できる種」を試験的に植えており、いわば都市全体を使ったオープンエア・ラボ(屋外実験場)としての役割を担っている。
「この森は、気候変動の時代に都市がどう生き延びるかを探るための実験でもあるのです」
プロジェクトを担当する造園家エドガー・ラメル氏は、SWI swissinfo.chへのインタビューでこう語る。エディブルフォレストは単なる食料供給源ではなく、気候変動への適応、生物多様性の保全、そして教育の場など、多くの目的のために使われる予定だ。
プロジェクトの費用は約8万〜10万スイスフラン(約1,500〜1,900万円)。資金は市と市民団体、環境NGOが共同で負担する。森の維持管理も地域団体が担い、草刈りや観察プログラム、環境教育イベントなどを通して市民に開かれた空間となる予定だ。
嵐の被害から始まったこの取り組みは、今や「災害復旧」ではなく「未来への適応」へと姿を変えた。都市の中で食を育て、気候の変化を観察し、人と自然が共に学ぶ場所。ラ・ショー=ド=フォンの「食べられる森は、これからの都市が進むべき新しい方向の一つを示している。
【参照サイト】Swiss town unveils Europe’s tallest urban edible forest
【参照サイト】La Chaux-de-Fonds Launches Europe’s Highest Urban Edible Forest
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