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気候変動への適応策とは・意味

気候変動への対応策

Image via Pixabay

気候変動への適応策とは

気候変動への適応策とは、気候変動の影響に備えるための対策である。気候変動の影響としては、たとえば気温上昇による農作物への影響や熱中症搬送者数の増加といった健康への影響、過去の観測を上回るような短時間強雨、台風の大型化などによる自然災害などがあげられるが、適応策はこのような影響に対して、被害を軽減してよりよい生活ができるようにしていくことを指す。

適応策と並んで議論になるのが、気候変動の「緩和策」である。緩和策は、気候変動の原因となる温室効果ガスを減らし、気候変動の進行を緩やかにすることを目的としている。2015年に締結されたパリ協定では、この緩和策とともに、気候変動への適応に関する能力の向上、ならびに適応に関する世界目標を定めることが第七条でうたわれており、気候変動対策として「緩和策」と「適応策」の双方を施していくことが重要とされている。

気候変動の緩和と適応イラスト

気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)ウェブサイトより

気候緩和とは・意味

適応策の例

国や地方自治体から企業や個人まで、様々な立場から取り組むことが可能だ。

【例】
◇国や地方自治体が中心となって実施する、大規模な取り組み◇
・将来の海面上昇による高波被害増加を見越した防波堤の建設
・大雨による浸水被害を防ぐためのインフラ整備
・ハザードマップの見直しと作成
・熱中症対策の呼びかけ

◇企業・個人で実施できる取り組み◇
・水不足に備えた節水
・災害に備えた避難経路の確認
・熱中症を防ぐための適切な冷房の使用
・気候変動への適応を促進する製品やサービスの展開(企業)・野菜や米の作付け時期の変更や、高温に強い品種への転換(農家)

なお、日本では2018年に、日本における適応策の法的位置づけを明確にする「気候変動適応法」ができた。これにより、国、地方公共団体、事業者、国民が協力して適応策を推進できるようになった。

適応策の意義と重要性

地球温暖化は、二酸化炭素などの温室効果ガスの大気中濃度増加によっておこる地球全体の気温上昇を伴う気候の変動であり、今後数十年の間に急激な速度で起こると考えられている。これは、人類がこれまで経験したことがないほどの危機であり、私たちの生活や生存が脅かされる可能性がある。したがって、今後劇的に変化する気候に合わせて、生活や行動、社会を変化させ、安定的に暮らしを持続させる各種の対応、つまり適応策が求められているのだ。

2014年に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書(AR5)」の第二作業部会(WG II):(影響・適応・脆弱性)の報告でも、緩和策と共に適応策を実施していく重要性が言及されている。 適応策の重要性は、地球規模で認められているのである。

もし地球温暖化を防ぐことができれば、適応策は不要となるが、温暖化を完全に止められる見通しは現在のところまだ立っていない。温暖化を止めるには、世界中で使っている石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料の使用を今すぐ止めるか、または使っても温室効果ガスを出さないようにするしかないが、それらを実行に移すのは非常に難しい。

2015年に採択されたパリ協定のもと、グローバルで温室効果ガスの削減に向けた努力が行われているが、野心的な目標を達成できたとしても、地球平均で1.5〜2℃の気温上昇、もし全世界の排出削減がうまく軌道に乗らなければ最大 4〜5℃の気温上昇が引き起こされる可能性があるとされており、適応策の実施は不可避であるといえる。

気候変動適応策の施策と関連法

気候変動適応策は、気候変動の影響から長期的な視点で人々や生活、生態系を守るために重要である、生態系、社会、経済システムを調整するものである。国やコミュニティは、すでに起きている気候変動の影響に対応しつつ将来の影響に備えるために、適応策を策定し、行動を実行する必要がある。

適応策は、地域社会、企業、組織、国や地域の独自の状況に応じてさまざまな形や形態をとるため、決まった解決策があるわけではないが、たとえば以下のようなものがあげられる。

  • 洪水対策
  • 台風の早期警報システムの設置
  • 干ばつに強い作物への切り替え
  • 通信システムの再設計

多くの国や地域では、独自の気候変動適応策の策定が進んでいる。たとえば日本では、2018年に「気候変動適応法」が施行され、政府が「気候変動適応計画」を策定すること、国立環境研究所が気候変動の影響と適応に関する情報を提供することなどを通じ、気候変動への適応を推進することが定められた。2018年に発表された「気候変動適応計画」は、「農業・林業・水産業」「水環境・水資源」「自然生態系」「自然災害・沿岸域」「健康」「産業・経済活動」「国民生活・ 都市生活」の7つの分野を対象としており、分野別にさまざまな施策があげられている。たとえば、農林水産業に関する主な施策としては、以下のような対策があげられる。

水稲栽培に関して:

  • 高温耐性品種の開発
  • 普及肥培管理
  • 水管理等の基本技術の徹底

森林・林業に関して:

  • 治山施設の設置
  • 森林の整備等による山地災害の防止
  • 気候変動の森林・林業への影響についての調査・研究

自然災害分野に関して:

  • 堤防や洪水調節施設・下水道の着実な整備
  • まちづくり・地域づくりと連携した浸水軽減・氾濫拡大の抑制
  • 各主体が連携した災害対応の体制等の整備

これらの計画は、政府全体として関係省庁が連携・協力しながら着実に適応策を実施していくためのものであり、また、約5年ごとに実施される影響評価をもとに、定期的に見直されることになっている。気候変動の影響は、私たちの仕事や暮らしに直結するものであり、国や地方自治体、事業者や個人レベル間で積極的な情報共有や議論を行っていくことが重要であろう。

適応策を実施する上での課題

気候変動の適応策を実施するにはそれなりの資金が必要となるが、途上国や貧困層はそのための十分な資金を持たないことも多い。結果として彼らは、気候変動による被害を「より受けやすい」立場に追いやられてしまっているのだ。この格差をどう埋めるかは、今後の大きな課題の一つとなるだろう。

また「適応策」という言葉の認知度の低さや、その重要性があまり知られていないのも課題である。「適応策」を知らないことで、災害の避難や備えが不十分になり、被害が拡大する恐れがあるためだ。

「気候変動」による影響は、残念ながら避けることができない。この事実を冷静に受け止め、適応策を世界中で実施していくことが、少しでも明るい未来を作っていく鍵になるのではないだろうか。

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【参照サイト】気候変動への適応|環境省
【参照サイト】AR5 Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change |IPCC
【参照サイト】気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT)
【参照サイト】環境省「気候変動適応計画の概要」
【参照サイト】What do adaptation to climate change and climate resilience mean?




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