地震などの災害発生時、その重要性とは裏腹に対策が後回しになりがちなのがトイレの問題だ。通常、災害が発生するとライフラインは電気、水道、ガス、下水道の順で復旧していく。
トイレは災害直後から必要なのにも関わらず、被災地では公共トイレは封鎖され、仮設トイレもすぐには来ないため、多くの人々がトイレに悩むことになる。実際に、東日本大震災のときに仮設トイレが避難所に行き渡るのにどのくらいの日数を要したかとの質問に対し、3日以内と回答した自治体は34%にとどまり、8日以上と回答した自治体は49%にも及んだ。
こうした災害時のトイレ問題を解決するべく株式会社カワハラ技研が新たに開発したのは、女性や子供など誰でも容易に組み立てられ、衛生的で事後処理も簡単な備蓄型仮設トイレ、「ほぼ紙トイレ」だ。試作版を今年の9月に完成させた。
このトイレは軽さと廃棄のしやすさを考慮して紙で作られている。「ほぼ」紙となっているのは、便槽だけは樹脂でできているためだ。設置後2週間の使用を想定したときは便槽も紙製だったが、より長期間使う事態を想定して設置後1か月間は耐えられるようにした。サイズも単体で200人使用できる大容量となっている。
また、ほぼ紙トイレは男女別でプライベートが確保できる個室洋室トイレになっている点もありがたい。災害時に使用される携帯トイレやテント式トイレの場合、防犯面が不十分でトイレを無理に我慢する人が出てくることなどもあるためだ。さらに、洋式にすることで高齢者やケガをしている人でも使いやすくなっている。
他にも衛生面を考えて屋外に設置できるようにするなど、実際に現場にいた被災者や支援者の意見をもとに考案されたこの「ほぼ紙トイレ」には説得力がある。だが、もちろんこれだけに頼るのではなく、複数のタイプに対応する臨機応変さが非常時には求められる。複数のタイプとは?日本トイレ研究所が「東日本大震災 3.11のトイレ ―現場の声から学ぶ―」の中で10種類以上の災害用トイレを分かりやすく分類しているので、ぜひそちらも参照してほしい。
【参照サイト】備蓄型仮設トイレ/試作品『ほぼ紙トイレ』本日(9月1日)完成
【参照サイト】東日本大震災 3.11のトイレ ―現場の声から学ぶ―