感染症を防ぐ一番の方法は、定期的に手の除菌をすることだ。様々な施設にアルコール消毒のためのボトルが置いてあるが、使っている人を見ることはあまりない。ポスターなどで注意喚起をしても余り効果はないようだ。
実際、感染予防に最も気を配っている施設の病院でさえ、施設内感染は毎年30万人にもなるという。そんな施設内の感染をテクノロジーとデザインの力で安価に激減できるアイデアがSurfaceskinsだ。
感染を広める原因は、感染源の移動と物理的接触だ。そうであれば、その人が望むと望まざるとに関わらず、移動するたびに必ず接触するもので除菌したら良い。そんなシンプルなロジックを突き詰めた結論は「ドアを開けるたびに除菌すること」だった。
ドアに特殊な素材のパッドをつけることで、それに触れるたびに滲み出るごく少量のアルコールジェルで実に90%以上の菌を殺菌できるというのである。そんな型破りな発想を実現したのは英国リーズ大学の7年もの研究から生まれた企業だ。
Surfaceskinsは病院内のドアプレートに使われる。ドアプレートの代わりに設置するのではなく、それに付着させる形で使うので導入コストが極めて低いのも重要なポイントだ。
既に研究実績もあり、2014年の調査では当然ながら通常のドアプレートよりも感染率を下げている。ただし、通常行われる手の殺菌などを一切しなくて良くなるようなものではなく、補助的な役割を担っていることは付言しておく。ドアを押すたびに手先に感触があるので、消毒に対する意識が高まることも副次的な効果として挙げられる。
また、応用先はまだまだ他にも想定されている。最も有効に機能するだろう食料店や、一度感染すると大変なクルーズ船などには今後確実に導入されることになるだろう。ドアパッドだけでなく、ドアの取っ手に取り付けられるようにするための開発も進んでいる。
Surfaceskinsというアイデアで脱帽するのは、やはりそのテクノロジーとデザイン両面からの鮮やかな解決策だ。適切な量のアルコールジェルを3枚の不織布を用いてきめ細かく出せるというテクノロジー。そして、感染症を防ぐために全員が絶対に高頻度で触れるもので殺菌をするというデザイン。問題解決とはまさにかくあるべしと言えるような素晴らしいアイデアだと言える。
【参照サイト】Surfaceskins
【参照サイト】Novel material keeps itself germ-free
(※画像:Surfaceskins より引用)