小売業界全体で広く行われている、余剰在庫の廃棄及び焼却処分。「新品なのになぜ捨ててしまうのか?」と疑問が沸くが、在庫は持てば持つほどに管理費用がかかる。さらに盗難や不正売却を防ぐための保護手段としても、残念ながらこの慣習は、ごく一般的だ。
英国の高級ブランドで最大の売り上げを誇るバーバリーは以前、2018年3月に終了した事業年度の年次報告書で、衣料品と化粧品あわせて、2,860万英ポンド(約42億円)相当の製品を焼却処分していたことを明らかにした。焼却処分は、製品が安値で市場に出回ることを防ぎ、同ブランドの「価値」を維持する動きとして、一時は正当性が主張されている。
バーバリーはこれについて「責任ある手続きで焼却した。」とコメントしたが、そもそも焼却すること自体が無責任だと、結果的には政治家や環境保護団体の批判に油を注ぐ形となった。多くの顧客、特に若い消費者は、より環境に配慮する傾向があることから、ブランドイメージ保護にはまったくの逆効果となってしまったのだ。
そこでバーバリーはこのほど、その習わしを全面廃止することを宣言。失業した女性の就職支援のため、面接用の服を提供するSmart Works等、慈善団体に衣服を寄付すると発表した。
バーバリー製品のレザー・オフカット(切れ端)を使用し、バッグ、ベルト、アクセサリーを作るElvis&Kresse等の企業とは、引き続き連携する。また、エレン・マッカーサー財団が取り組む、再生可能素材やリサイクルされた衣類から新しい服を作るプロジェクトにも参加する。サステナブルな新素材の開発を行うため、英ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで研究グループも設立し、この分野をリードする構えだ。
さらに同社は、本物のファーを使用した製品の販売も、今後行わないことを同時に発表した。ファーついては、毛皮をとるだけのために大量の動物の命を奪うことになるため、動物愛護団体などから厳しい目が向けられていたという。
バーバリーのCEO、マルコ・ゴベッティ氏は、「現代でいう“高級”とは、社会的、環境的責任を負っていることを意味します。この信念は、バーバリーの信念でもあり、長期的な成功のカギを握るでしょう。」と述べる。
今回の発表は、160年以上の歴史を持つブランドが変化の時代に突入したことを伺わせる。伝統を重んじる英国の老舗ブランドバーバリーが今後、どのような昇華を遂げていくか楽しみだ。
【参照サイト】British fashion house Burberry to stop burning unsold items
【参照サイト】Burberry to Stop Burning Clothing and Other Goods It Can’t Sell