ドイツの空の玄関フランクフルト。その近郊の高速道路に、EVトラックが充電しながら走行できる電化道路のテスト区間がもうすぐ設置される。フランクフルトはドイツのほぼ中央に位置しており、街をかすめてクモの巣状に伸びる高速道路では、ドイツ国内をはじめ全欧州からの車が絶え間なく往来する。この交通量が多い場所で電化道路の実験が行われるということで、注目が集まっているようだ。
現在、世界の国々がパリ協定に基づき、気候変動や大気汚染問題に取り組んでいる。車が充電しながら走行できる電化道路も、その解決策の1つだ。電化道路は走行中の車に電気を供給することで、電気自動車の不便さを補い、環境に優しい交通を可能にする。
IDEAS FOR GOODでは以前、スウェーデンに誕生した全長2kmの電化道路をご紹介した。道路に敷設したレールから車にエネルギーが供給されるという斬新なシステムだ。スウェーデンのロベーン首相とドイツのメルケル首相は、電化道路の開発においてパートナーシップを深めていくことを表明している。
今回、建設が進められているフランクフルト近郊(ランゲン/モルフェルデンとヴァイターシュタット間)の高速道路A5 の電化道路では、大型車の走行車線の上部に設置された電線から、EVトラックに電気を供給するシステムを採用している。テスト区間は高速道路の両方向各5km で、全長10㎞。供給エネルギーはもちろん再生可能エネルギーだ。
ドイツ環境省はこのプロジェクトに1,460万ユーロ(約19億円)を計上している。環境省の事務局長ヨッヘン・フラスバート氏は、こう語る。「電線から大型車に電気を供給することは、貨物輸送を環境に優しいものに移行していくうえで、非常に効果的な方法だ。これまで長い間、公共道路ではない特別なテスト区間で、電線を使った電気大型車を試験してきた。そして今、我々の技術は実際の道路や高速道路でテストを行える段階に来たのだ。」
官民が一体となってテスト区間運用開始に取り組んでいるのも、このプロジェクトの特徴だ。設計施工はドイツのシーメンス社が担当し、テスト運用についての研究はダルムシュタット工科大学の交通計画・交通技術研究室が行う。また、テスト区間のあるヘッセン州では、多くの運送会社が通常輸送に使う車両を電化道路テスト区間用に改良中だ。
現在ドイツでは、このフランクフルト近郊の区間を含め、 3つの電化道路が建設中だ。フランクフルト近郊の区間は、ドイツの高速道路の中で最も交通量が多い場所ということで、これまで開発してきた技術を実際の交通条件で試すことを目的としている。完成は2018年末を予定しており、そこから数年間テストが行われる。
欧州で建設が進められている電化道路は、今回のフランクフルト近郊のテスト運用開始とともに、さらなるステージに入っていく。気候変動や大気汚染問題解決の糸口となる電化道路の、今後の開発運用に期待したい。
【参照サイト】Dritte deutsche Teststrecke für Elektro-Lkw
【参照サイト】eHighway – Lösungen für den elektrifizierten Straßengüterverkehr
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