あなたは年に何回、旅行をするだろう。年に何回、飛行機に乗るだろう。
世界の気候変動を調査するメディアNature Climate Changeの記事によると、CO2排出の8%は観光業が占めているという。そして世界観光機関UNWTOの統計では、そのうちの75%が飛行機や車、鉄道などの移動手段によるもので、さらに移動手段で排出されるCO2の54~75%は飛行機使用によるものだということがわかっている。
飛行機のCO2大量排出問題解決すべく、航空会社はこれまで多くの環境対策を行ってきた。カンタス航空が開発した「木材由来のバイオ燃料バイオ燃料」、飛行機を軽量化するためにエミレーツ航空が開発した「窓のない機体」、ブリティッシュエアウェイズの「家庭ごみから作る燃料」などだ。
そしてこのほど、英ヴァージンアトランティック航空が、2018年10月からアメリカのオーランド発ロンドン行きの飛行機に、鉄鋼工場から出る産業廃棄物を燃料として使用し始めた。
この事業を始めるにあたり、ヴァージンアトランティック航空はアメリカのLanzaTech社と共同開発を行っている。両社は2011年から研究を始め、炭素を多く含む産業廃棄ガスをジェット機に使うためのエタノールに変える技術を開発した。
新たに開発された燃料は、従来のジェット燃料に比べてCO2の排出量を70%削減できる。また、原料となる炭素ゴミは豊富にあり入手しやすいため、他のジェット燃料と同等価格であることも大きな魅力だ。これにより、ヴァージンアトランティック航空をはじめとする航空会社は、この新燃料を随時購入して飛行機を運航できるようになる。
LanzaTech社は、世界の鉄鋼工場の65%でこの燃料精製プロセスを適用できると推定している。新たな燃料のポテンシャルは高い。
ヴァージンアトランティック航空は現在、LanzaTech社と共に、この新しいジェット燃料の通常使用のための開発を重ねている。さらに、CO2を吸収して活用する、世界初の商業ジェット燃料生産工場をイギリスで建設することも計画中だ。
世界の気候変動問題を解決すべく、ヴァージンアトランティック航空が開発した産業廃棄ガスのジェット燃料。これからのさらなる研究開発と普及が期待される。
【参照サイト】Virgin Atlantic announces world first in race to develop new sustainable aviation fuel
【参照サイト】Nature Climate Change
【参照サイト】世界観光機関UNWTO