自宅の「健康度」知ってる?喘息防止に役立つセンサーキット“Whare Hauora”

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世界で喘息(ぜんそく)患者は2億3500万人以上(※1)。気候変動の影響により、ますます増加傾向にあるという。発症すると気温や湿度の変化、アレルゲンとなる花粉やホコリ、カビなどにより咳が止まらなくなるなどの症状に悩まされる。

喘息患者にとって、部屋の気温や湿度の変化を知ることは症状の軽減につながる重要な情報となるが、そのための計測機器が高価だったり、使いづらいといった問題がある。

この問題を解消すべく、ニュージーランドのチャリティー団体「ホエールハウラ(Whare Hauora)」が普及しようとしているのが、部屋の気温と湿度を計測できるキット「ホエールセンサー」だ。ちなみにマオリ後でホエールは家、ハウラは健康を意味する。

Image via Whare Hauora

「ホエールセンサー」は4つのセンサーとソフトからなり、センサーは10分おきに温度と湿度を計測。露点を計算する。読み取ったデータはインターネットを通じて「ホエールセンサー」のウェブサイトに送られ、計測結果を元に、利用者がどのような対応をすればよいかわかるアドバイスを無料のアプリを通じて送信する仕組みだ。

センサーは、利用者が自分で組み立てをするようになっている。なぜ組み立て式にしたかというと、製品化するためにユーザーテストをしていた際、「盗聴器がしかけられているのではないか」とか「これは爆弾?」と聞かれることがあったからだ。

利用者自身に組み立ててもらうことによって、そのようなしかけはない、ということを理解してもらう。組み立ては簡単で、子どもでもレゴ感覚でできる。

このセンサー開発のきっかけは創設者の一人であり、ニュージーランドに住むブレンダ・ワレスさんの5歳の娘だった。喘息に悩まされ、学校に行けずに家にいる日々。ワレスさんは娘の部屋の気温や湿度を測るため、300ドルもするセンサーを家に設置していた。だた、部屋は他にも5つあった。各部屋に300ドルのセンサーを買うのは高すぎる。

そこでワレスさんは30ドル相当の部品を購入。オリジナルのセンサーをつくり、家の全部屋に設置した。その結果、娘の部屋が家の中で一番寒いことがわかった。そこで、娘の部屋を他の部屋と交代したところ、喘息の症状を軽減することができたという。

このことを知人のアンバー・クレイグさんと話をしたところ、他にも同じような問題に直面している家族がいるにちがいない、という話になり開発したキットを普及することにした。

カビは60%以上の湿度で成長し、胞子を空気中に放つ。これがせきやくしゃみ、肌の痒み、喘息を引き起こす要因となる。問題はだいたい、寝室かリビングが多いという。こうしたことが分かるのも、センサーによる情報の可視化のおかげだ。

Image via Shutterstock

このセンサーは、単純な販売をしていないところも面白い。2018年8月まではクラウドファンディングを活用し、販売および寄付募集を行っていた。

1セット約40ドルで販売し、一つ売れるごとにキットを貧困地域などに寄付、センサーをどう活用し健康改善を行えばよいか、などのワークショップを行う。また寄付を活用し、適正な労働条件のもと、手頃な価格で製造できる工場を見つけるための海外調査も行っていくという。

このような普及方法をとるのは、ホエールハウラが「病気を引き起こさない家づくり」をビジョンとしているから。気温や湿度の変化は喘息患者だけではなく、すべての人の健康に影響する。将来的にはすべての家に「ホエールセンサー」が設置され、ニュージーランドの建築基準が改善されることをめざしている。

創設者のワレスさんは言う。「不健康の原因を測れないことには、どうにもできない」。気温や湿度を可視化することで、症状を軽減するなど対応できることは多い。日本でも風呂場などでの寒さのために脳梗塞で亡くなる高齢者の増加が問題になっている。こうしたインフラは、日本でも必要ではないだろうか。

※1 2012年 WHO、WMO調べより

【参照サイト】Whare Hauora

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