香港は中国の特別行政区で、アジアにありながら長らく英国に帰属した歴史がある。人口過密の地域環境、特殊な経済政策など、地上稀に見る独特な場所だ。
IDEAS FOR GOODでは以前、その香港の子供の学習空間を併設したコワーキングスペースを紹介したが、学校も負けじと新たな取り組みを行っている。将軍澳(しょうぐんおう)ニュータウンにあるフランス系インターナショナルスクールの新校舎がこのほど完成し、「香港で最もグリーンな学校」と評されているのだ。
エネルギー効率が良い手法で開発され、サステナビリティを推進するこの新しい小中学校は、まるで緑のオアシスだ。香港の環境にやさしい建築の評価ツール「BEAM」でPlus Gold基準の高評価を得ている。
40の国籍からなる1,100人の児童生徒が教育を受ける新しいキャンパスには、カラフルなセラミックタイルが多用されており、教室に加えて、図書館、食堂、体育館、プール、多機能アリーナ付きの講堂、庭園、そしてキャンパスの各所をつなぐ400メートルトラック等が備わっている。
インテリアの素材にもこだわっているようだ。床には天然ゴム、天井には竹、布にはウールが採用されている。室内は日光が当たりやすい構造で明るく、暖房や室内灯の使用も最小限に留めて節電することができる。低流量の水道設備は、水の消費を従来の30%節減。緑豊かな広い敷地は、都会の空気の質を清浄化する効果もあるという。
教室は音響にも配慮し設計されており、室外からの騒音が少なく、勉強や活動に集中できる環境だ。またプレイスペースは、レイアウトに工夫を凝らし、生徒同士が対話をしやすい作りになっている。
新校舎の設計を行ったデンマークの建築会社 Henning Larsen Architectsのデザインディレクターであるクロード・ゴーデフロイ氏は、「従来の教室の観念を壊し、教員と生徒たちがオープンなスペースで学びあえるような場づくりに挑戦しました。」と語る。
「環境が人をつくる」という言葉の通り、児童の想像力や行動力を駆り立てるようにデザインされた学校だ。
戦後の第一次ベビーブームと第ニ次ベビーブームで増加した児童の数も落ち着き、現在はむしろ少子化が進んで教育も成熟してきている日本。今後は、地球にやさしいサステナブルな生活を営むため、そして次世代の子供たちを育むための学校環境を創造する取り組みに期待したい。
【参照サイト】Hong Kong’s greenest school makes space for collaboration and creativity