近年、環境に多大な負荷を与えないサステナブルな取り組みが注目され始め、飲料・食品メーカーは自社の生産・加工・流通過程に、より気を配るよう求められている。廃棄物を減らしたり、二酸化炭素排出量を減らしたりする取り組みは典型的な例だ。そういったなか、廃棄物の単なる再利用にとどまらない「アップサイクル」を行う会社が登場している。
アップサイクルとは、廃棄物に手を加えて高い商品価値を付加する行為を指す。新聞紙を再生紙に変えるなど、もとの商品より価値が下がるリサイクルは「ダウンサイクル」と呼ばれ、アップサイクルと区別される。アップサイクルを行うことで、商品性を重視したものづくりができ、その分思い切って元の値段より高い価格で販売することも可能になる。
ニューヨークの会社RISE Productsは、ビールを醸造するブルワリーが廃棄する麦芽粕(ばくがかす)を集め、Super Flour(スーパー小麦粉)と呼ばれる穀粉に加工し販売している。Super Flourの用途は通常の小麦粉と似ており、パンケーキやキッシュといった料理に使える。驚くのはその栄養価の高さで、通常の小麦粉と比べてプロテインが2倍、食物繊維が12倍も多く含まれている。
Super Flourのシリーズで、キャラメル&アーモンド風味のBarley Flourの場合、価格は24オンス(約680グラム)で24ドル(約2,700円)となっている。1キロ300円以下で買える小麦粉があることを思えば、相当高価な品だ。生産効率を上げて価格を下げるといった課題ももちろんあるが、品質の高い穀粉だからこそ、多少割高でも消費者が買いたくなるような商品づくりとなっている。これがまさにアップサイクルの一例だ。
今、世界で毎年4,200万トンの麦芽粕が廃棄されている。RISE Productsはこの食料廃棄問題の解決に向けて活動しているわけだが、まずは地元に寄り添ったアプローチを取っている。麦芽粕は近隣のブルックリンとクイーンズにあるブルワリーから集め、完成したSuper Flourは地元のレストランやカフェにおろす。地産地消の小規模なビジネスで、地域の活性化に貢献している。
麦芽粕をSuper Flourに加工するRISE Productsの技術は、ぶどうのしぼりかす、おから、果物の皮といった廃棄物にも簡単に適用することができるという。ゴミから新たな価値を生み出すエキスパートである同社は、アップサイクルに関するコンサルティングサービスも提供している。連絡を取ってみれば、食品技術者の豊富な経験に裏打ちされたソリューションが見つかるかもしれない。
【参照サイト】RISE Products