【SB2019Tokyoレポ#3】 SDGsの視点から地域の「価値」を再定義することで見える、新しい経済の形

Browse By

地方行政が頭を悩ます地域経済を活性化させるための施策について、地域ならではのユニークな商品開発や子育てしやすい制度の整備など現在数多くの試みがある。3月6日と3月7日に実施されたサステナブル・ブランド国際会議2019東京では、3月7日に地方創生の取り組みに新たな切り口を提案するセッションやシンポジウムが多く実施された。

今回は立場を超えたコラボレーションに注目した「地方創生SDGs最前線」というシンポジウム、地域経済の付加価値に着目した「地域経済をリ・デザインする」いうセッションを紹介する。

SDGsを官民パートナーシップ強化のきっかけに

<「地方創生SDGs最前線」セッション登壇者>
  • Facilitator:株式会社伊藤園 顧問 笹谷 秀光氏
  • Panelist:長野県知事 阿部 守一氏
  • Panelist:岡山県真庭市長 太田 昇氏
  • Panelist:一般財団法人建築環境・省エネルギー機構理事長 村上 周三氏
  • Panelist:学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学学長 田中 理沙氏

「SDGs」と聞くと海外の貧困地域を救うための目標であるように想像してしまうかもしれないが、SDGsの17の目標は実は地方創生にも大きな役割を果たすという。11番目の目標である「住み続けられる街づくりを」を中心に据え、その他16の目標を地域の課題として政策目標の共有や「産官学」を超える「産官学金労言」(「金」は金融、「労」は労働組合、「言」はマスコミを指す)との連携が可能になる。

SDGs(Sustainable Development Goals)

未来まちづくりフォーラムPlenary「地方創生SDGs最前線」と題したセッションでは、知事や市長、財団法人や学校法人といった立場を超えた地方創生とSDGsの実践について対談が行われた。

産学連携の視点から、学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学学長の田中理沙氏は「企業活動においてSDGsの中での立ち位置の把握や自分の活動に磨きをかけるために、高等教育機関として情報発信をエンジンにする必要がある。『産官学金労言』といった人が集まる場を広げていきたい。」と述べた。

実行委員長 笹谷 秀光氏、長野県阿部守一知事、岡山県真庭市の太田昇市長、学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学学長の田中理沙氏、一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構理事長の村上周三氏(左から)

SDGs未来都市の推進に向けて取り組む一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構理事長の村上周三氏は「地方創生に取り組む地域はいくつもあるが、特にSDGs未来都市に認証される優良地域は自治体の独自性を重視している。このような地域のベストプラクティスを見習ってほかの地域も底上げされていくだろう」と話した。

岡山県真庭市長の太田昇氏は「SDGsは市の方針そのものであり、地球市民の観点から考えられることはたくさんある。真庭市の地域資源は山だが、現在周辺の山から排出される廃材を利用したバイオマス発電や木材を中心とした新しい木造建築材(CLT)を活用している。」と述べる。

長野県は、SDGs(持続可能な開発目標)達成に向けて優れた取組みを提案する「SDGs未来都市」に選定された。長野県知事阿部守一氏は「SDGsの取り組みは企業が行政に深く入り込んだ形で体制強化が必須だ。長野県では若い世代の都心部流出が課題で、実業と学びを融合した新しい県立大学を作った。森林管理システムを用いて遊休資源の活用も考えている。」と強調した。

SDGs未来都市地域(内閣府地方創生推進事務局「地方創生に向けたSDGsの推進について」より抜粋)

この対談ではまさにSDGsの理念である「誰一人取り残さない」コラボレーションを推進していた。地域コミュニティに深い人脈を持つ行政と、マネタイズが得意な企業。このパートナーシップがSDGsを共通のテーマとしてコミュニケーションを取ることで生まれる価値は大きいものになる。

いかに新しい価値をつけて地方ブランドにできるか

<「地域経済をリ・デザインする」セッション登壇者>
  • Facilitator:SB東京サステナビリティ・プロデューサー 足立 直樹氏
  • Panelist:株式会社美ら地球 代表取締役 山田 拓氏
  • Panelist:エーゼロ株式会社自然資本事業部 執行役員 岡野 豊氏
  • Panelist:日本生活協同組合連合会 代表理事会長 本田 英一氏

「地域経済をリ・デザインする」と題したセッションでは、創業当初から地域住民に寄り添った事業を展開してきた生活協同組合と、現在新しいビジネスモデルで地域経済を発展させている2社より、地方から生まれる新しい経済の形を提案した。

株式会社美ら地球の事業である「里山experience」は里山での経験を主に欧米豪の外国人向けにワンストップで提供している。株式会社美ら地球の山田拓氏によると「地域らしいものに触れたいというのが旅慣れた人の嗜好。欧米豪では旅を通じて訪れた地域に貢献し、サステナブルを考えるという潮流がある」という。

SB東京サステナビリティ・プロデューサー 足立直樹氏、株式会社美ら地球の山田拓氏、エーゼロ株式会社の岡野豊氏、日本生活協同組合連合会の本田英一氏(左から)

エーゼロ株式会社の岡野豊氏によると、林業が盛んだった岡山県西粟倉村ではサステナブルな生態系を重視したうなぎ漁を展開しているという。林業で出た廃材を燃やし、その熱を使ったうなぎの養殖や、養分のあるうなぎの糞を使った農業などごみを資源にするといった「儲かれば儲かるほど環境や暮らしが良くなる仕組み」を整える。

日本生活協同組合連合会の本田英一氏は「機能性と採算の合う市場経済の中では見えない新たな価値が地方経済では成り立っている。生協は自己完結型の事業を重視してきた歴史があるが社会的な問題は様々なステークホルダーと手を組む必要があるだろう。」と締めくくった。

編集後記

一連のシンポジウムで、地域の価値に気づくことが社会、経済、環境の豊かさにつながることが主張され続けてきた。地方の資源には都心部の「機能性」「効率性」といった分かりやすい指標では計れない価値がある。特に今回のシンポジウムやセッションではSDGsのフレームワークを通して地域の新しい経済発展の形が見えたように思う。

そのことに気づけるのは「働き方改革」「多様な生き方」が注目されてきた現代だからこそかもしれない。地域経済の活性が国の豊かさの指標になる日はきっと近い。