IDEAS FOR GOODではこれまで、大都市で問題となりやすい自動車事故や排気ガスに対する取り組みとして、バルセロナ市やヘルシンキ市が自動車の交通量を抑えて人々が歩きやすい街づくりを始めた様子を紹介してきた。
そして今年10月には、カリフォルニア州の大都市サンフランシスコでも、市の中心にあるマーケット・ストリート(Market Street)上の約2.2マイル(約3キロ)の区間で、バスやタクシーを除く自動車の通行が禁止されることとなった。UberやLyftなどのライドシェアサービスも通行禁止となる。プロジェクトの初期段階では、レストランやカフェが立ち並ぶ5th Streetから8th Streetの区間から見直される予定だ。
マーケット・ストリートは、サンフランシスコの歴史が始まって以来、市の大動脈として街の発展と人々の生活を支え続けた。海沿いに建つフェリービルディングからツインピークス近郊までを繋いでおり、金融街や、ホテルやショップ、市庁舎に向かう際にも利用される。歩行者や自転車量も多く、ピーク時には1時間で歩行者が約50万人、自転車が約650台も往来するという。
しかし、歩行者や自転車にとっては衝突事故の危険性の高い通りでもあった。昨年は123件もの負傷事故が起き、被害者の多くが歩行者や自転車である。また、市内で最も危険とされる10箇所の交差点のうち、5箇所がマーケット・ストリート上に位置する。その内の一つ、フィフス・ストリート(5th Street)との交差点では、2010年から2016年の間で38名の歩行者が交通事故に遭っていた。
1960年代に地下鉄や長距離列車設置の地下工事が行われて以来、マーケット・ストリートのデザインの見直しは行われてこなかった。自動車レーンと自転車レーンが突如交差する箇所や、自転車専用レーンを示す緑色のペイントが剝がれ落ち自転車専用であることが分かりにくい箇所もあり、市民からも衝突事故への不安の声が上がっていたのだ。さらにサンフランシスコ自転車連合(San Francisco Bicycle Coalition)などのNPOが、市民の安全を第一に考えてマーケット・ストリートのデザインを見直すよう、10年以上訴え続けていた。
このような動きを経て、マーケット・ストリートにおける自動車通行禁止が、サンフランシスコ市交通局(the Municipal Transportation Agency)の役員会議で全会一致で可決されることとなった。また、市が推進する「ベター・マーケット・ストリート・プロジェクト(the Better Market Street Project)」という約600億円(6億ドル)規模のイニシアティブからも承認を得ることができた。
「市の大動脈とも言えるマーケット・ストリートだからこそ、歩行者や自転車が安全に利用できる道路であるべきだ」ロンドン・ブリード(London Breed)市長は話す。自動車やトラックの交通量が減少することで、安全かつバスがスムーズに走れるようになる。また、公共交通機関の利用が増加し、市内の温室効果ガス排出量削減に繋がることも期待されている。
世界各地の大都市で広まりつつある、市民の安全を考えた街の再設計。生活スタイルの変化やテクノロジーの進歩を受けて、街のあり方が今見直されようとしている。
【参照サイト】San Francisco officials just voted to ban cars from one of the city’s busiest streets. Here’s what visitors need to know.
【参照サイト】Banning cars on SF’s Market Street, once a radical idea, approved unanimously
【参照サイト】Market Street Railway