近年、世界中のホテル業界でサステナビリティの機運が高まりつつある。IDEAS FOR GOODでも、日本の水素ホテルやコスタリカの太陽光発電のみで運営を目指すホテル、スペインの使い捨てプラスチックゼロのホテルなど、これまでさまざまなエコホテルをご紹介してきた。
そんな中、フランスの建築デザインチームciguë(シグー)は、ホテルでの水の無駄遣いに着目。問題を解決するモデルルームを作成した。彼らがパリの展示会で発表した「A Room for Tomorrow」には、一般的なホテルと比較して70%の水を節約できる雨水収集システムがある。
このプロジェクトの始まりは、「私たちが日常で使う水はどこからきて、どこへ行くのか?」という疑問からだった。私たちは普段当たり前のように手を洗い、トイレを流し、シャワーを使っている。毎日繰り替えされることなので見過ごされがちだが、かなりの量の水を消費している。たとえばシャワーを一度使用するだけで、50リットル以上の水を流しているのだ。そこでciguëは環境工学の専門家と協力し、雨水収集システムを考えた。システムは以下のように機能する。
- ①のタンクで雨水を貯める
- ②の植物を使った浄化システムで、雨水をきれいにする
- さらに③の活性炭フィルターで濾過し、雨水が飲料水となる
- ④のシャワーや、蛇口から水が出る
- 出た水は⑤を経由して、再度植物浄化システムを通り、再利用される。
- 雨水をそのまま使用する⑦のトイレもスケルトンになっており、排泄物を肥料やバイオマスに変換する
ciguëは「普段目にすることのない水の流れを可視化することで、水資源の無駄遣いには解決法があることを示した。これは、私たちの生活を見つめ直すきっかけになるだろう」と公式サイトで述べている。
生活の中で当たり前となっている水の大量消費に着目し、技術で70%の節水を実現する「A Room for Tomorrow」。水不足で困っている地域だけでなく、太陽光パネルなどと同様に家庭でも簡単に使えるようになれば節水、コスト削減とメリットはたくさんあるだろう。まだプロトタイプとはいえ、このシステムはこれからのあらゆる部屋をつくるときに役立つアイデアとなるかもしれない。