2030年までに、CO2排出量を実質ゼロにすることを公約しているロンドン。
2022年1月に発表された報告書によると、この目標を達成するには、2030年までに、同市における車の交通量を27%以上減らさなければならないという(※1)。
車の利用をできるだけ減らすために、どのような取り組みを行えばいいのだろうか。
ロンドンは2019年4月、市内中心部に、一定の排ガス規制を満たさない車に通行料の支払いを求める「超低排出ゾーン(ULEZ)」という区域を設けた。それにより、市内中心部に乗り入れる排ガス量の多い車は、1日あたり13,500台減ったとされる(※2)。
また、2021年10月には、同区域が従来の18倍の大きさに広がり、大気汚染や渋滞などの改善につながることが期待されている。
そして2022年3月、ロンドン市長のサディク・カーン氏は、2023年にULEZを市内全域に拡大する計画を発表した。ロンドン交通局に、実施を検討するよう要請しているという。
同市は、ULEZを市内全域に拡大することで、ロンドンの周辺部におけるCO2排出量を13万5千~15万トン削減できるとしている。また、ロンドンを走る排ガス量の多い車が、1日あたり2万~4万台減ると見込んでいる。
2022年3月現在、ULEZ内を走る、排ガス規制を満たさない乗用車やバイクなどは、1日あたり12.5ポンド(約1,900円)を支払う必要がある。12月25日のクリスマスを除いて、24時間毎日、このルールが適用される。
カーン氏は、ULEZの取り組みを通じて、ロンドン市民の健康を守る大切さを訴えている。さらなる大気汚染対策をとらなければ、今後30年間で約55万人のロンドン市民が、大気汚染に関連する疾患を発症する可能性があるという。
同氏は、「行動を起こさなければ、私たちは経済面、生活面、環境面、健康面で、大きな代償を払うことになる。大気汚染の削減、気候の非常事態への対応、渋滞の緩和にかかるコストよりも、はるかに大きい代償であることは明らかだ」と述べている。
2019年に、世界で初めて時間帯を限定しないULEZを導入したことで、注目を集めたロンドン。他の都市が、ULEZの今後の動向から学べることもあるのではないだろうか。
※1 Mayor announces bold plans to secure a green, clean future for London | London City Hall
※2 ULEZ reduces 13,500 cars daily & cuts toxic air pollution by a third | London City Hall
【参照サイト】Mayor announces plans to expand Ultra Low Emission Zone London-wide | London City Hall
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