もし校舎がミュージアムだったら?米国に誕生した、五感とデザイン哲学が融合する小学校

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アメリカ・ペンシルバニア州には、校舎一体がミュージアムのような小中学校がある。2022年8月に新たな校舎を作った、アーマンクレスト小中学校(Ehrman Crest Elementary and Middle School)だ。

さまざまな美術館や博物館校内のデザインからインスピレーションを受け、学校に多くのインタラクティブな仕掛けを施し、楽しく面白く学びのきっかけを与えるこの学校。さまざまな学びのスタイルを持つ子どもに合った環境が提供できるよう、フレキシブルな教育環境も用意し、タイム誌の「The best Inventions of 2022」に見事ノミネートされた。

「四角い箱に、四角い部屋。誰にでも作れるその空間は果たして私たちが本当に望んでいるものなのか?」

従来の学校の在り方への問題に立ち向かうべく、アメリカを本拠とする建築事務所CannonDesignとピッツバーグ子ども博物館のパートナーシップにより、活動的で体験型学習を提供する学校が誕生したのだ。

学校のユニークさは、デザイン性と機能性にある。校舎に足を踏み入れた瞬間からワクワクする仕掛けがたくさんだ。建物内には、大きなスロープやポップでカラフルなさまざまな形のテーブルや椅子が並び、教室や屋外をつなぐ壁はガラス張り。このようなデザインは「落ち着ける空間」を意識して、メンタルヘルスに配慮して設計されている。

 

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これまでの学校は、教室内やホールに生徒が集まって学ぶことが当たり前であったが、この小中学校は、廊下やグループスペース、壁面など建物全体が体験の一部となっている。

例えば、廊下は学習スペースにもなっており、床に曜日と時間を映し出すソーラーカレンダーの工夫がなされている。運動場には、遊歩道がありカエルやコオロギを探すことができ、日常的に自然に触れられる。図書館には、3Dプリンターなどの最新技術があり「メーカースペース」の役割を果たす。カフェテリアは、食事だけでなく勉強や学年を超えた交流が活発に行われる場所だ。他にも、バーチャルリアリティや教育用のゲーム、コーディングのレッスンに使えるスペースがある。

また、学校に通うのは、「より良い高等教育を受けるため」だけではないという観点から、自動車や料理に関するプログラムを誰もが見える部屋で開催している。従来の学校ではこういった特別なプログラムは希望した生徒のみで、あまり目立たない教室で行われていたのに対し、新たな校舎にはには、子どもたちの興味や関心を伸ばす仕組みがある。男女共用トイレやホワイトボードの壁などの導入に関しての希望もあり、近々実現する日が来るかもしれない。

先進的な仕掛けは、デザイン性だけでなく、災害対策にも活用されており、気候変動による竜巻や暴風雨のためのシェルターとしても機能する。ペンシルバニア州で初めて誕生した、生徒と教職員1,400人全員が入れるストームシェルターを完備した学校となった。

アメリカ国内では、資材や人件費の高騰などの問題により学校建設が積極的に行われていない状況だ。特に低所得者層の家庭が住む地域では、建物が壊れないような修繕や、パンデミック時代のニーズである換気システムを交換することがやっとである。

アーマンクレスト小中学校のように、授業中や教室内だけでなく、子どもたちがいつでも主体的に創造性を発揮して学べる学校が増えることに期待したい。この学校から巣立った生徒たちの将来が楽しみだ。

【参照サイト】SENECA VALLEY SCHOOL DISTRICT The Story of Ehrman Crest
【参照サイト】Ehrman Crest Elementary and Middle School
【参照サイト】Learning spaces, wellness rooms, nature trails. This is the K-12 school of the future
Edited by Kimika

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