私たち人間という動物は、長い年月をかけて他の生物たちとつながり合い、その恵みのなかで生かされている。だが、その自然の多様性は今この瞬間も失われ続けている。
現在の人間活動によって引き起こされている種の絶滅は、過去とは比較にならない速度で進行。1600年~1900年において生物種の絶滅速度は1年で0.25種だったが、1975年以降、1年に40,000種と急激に上昇し続けているという(※1)。
生物多様性が大切だ、それがわかっていても日常を忙しなく過ごす中では、動植物に想いを馳せる時間がないこともある。それでは、日常のなかの何気ない行為を通して生物多様性について考えてみるのはどうだろう。
今回紹介するのは、「検索する」ことで生物多様性の保護に貢献できる検索エンジン「KARMA」だ。
KARMAは、WEBブラウザの拡張機能や、App Store、Google Playからのアプリインストールで使用できる検索エンジンである。検索ページで表示されるスポンサーリンクからの収益を生物多様性や動物福祉に取り組むパートナー団体に寄付しているのが特徴だ。パートナー団体は、以下である。
- HUMANE SOCIETY INTERNATIONAL(HSI):世界50カ国以上で動物福祉に取り組む団体。野生動物の保護、家畜福祉の向上、犬や猫の保護、動物を使わない実験と研究の推進、災害への対応などを行い、年間10万頭以上の動物を救う。
- RE:WILD:生物多様性にとって重要で、動物たちに恩恵をもたらす野生の土地を保護・回復させる団体。3万種以上の種に恩恵をもたらす2億3000万エーカー以上の土地を保全している。
また、「検索履歴の保持をしない」「顧客をトラッキングしない」「ユーザープロファイルを作成しない」といったように、プライバシーの保護にも力を入れている。
筆者も実際にPCでKARMAを使用してみた。準備はGoogleの拡張機能をインストールするだけと、とても簡単。新しいタブを開くと、背景にランダムで野生動物の写真が表示されるようになっていた。
検索バーにワードを打ち込むと、瞬時に結果が現れる。主要検索エンジンと同じアルゴリズムを使っているとのことで、使用感には全く問題がない。
検索結果画面でまず目に入ったのが、画面右上にある緑の鳥のアイコンと数字だ。検索を繰り返すたび、一つずつ数字が増えていくのに気づく。これは、「KARMAカウンター」と呼ばれるもので、ユーザーがKARMAで検索した回数を視覚化している。
通知ベルのアイコンからは、生物多様性に関する記事が集められた「LEARN&ACT」というニュースフィードにアクセスすることができた。「地元の自然について知る」「食生活を変える」など、個人のアクションについて紹介する記事もあり、自分にできることを考えるきっかけとなりそうだ。
KARMAの共同創業者であるYann Kandelmanは、プレスリリースのなかでこう語る。
検索エンジンはすべてのインターネットユーザーによって日常的に使われており、影響を与えるための最もスケーラブルなツールです。KARMAでは、インターネットユーザーに数クリックでソリューションの一部になれる機会を提供しています。
過去にIDEAS FOR GOODでは、検索するたびに植樹される検索エンジン「Ecosia」もご紹介した。
わからないことがあれば、スマートフォンを取り出してその場で検索する──そんな人は少なくないだろう。2022年のデータによると、Googleで1日に検索が行われる回数はなんと85億回以上(※2)。多くの人が日常的に検索という行為を行っていることがわかる。
検索する。リンクをクリックする、画像をタップする。大きなアクションを起こさなくても、できることはある。あなたの指先から、世界は変わってゆくのかもしれない。
※1 生物の多様性(環境展望台)
※2 Similarweb
【参照サイト】KARMA
【参照サイト】HUMANE SOCIETY INTERNATIONAL
【参照サイト】RE:WILD
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