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トーンポリシングとは・意味

トーンポリシング

トーンポリシングとは?

トーンポリシング(Tone Policing)とは、社会的課題について声を上げた相手に対し、主張内容ではなく、相手の話し方、態度、付随する感情を批判することで、論点をずらすこと。

2017年頃から日本でも注目されるようになった、トーンポリシング。話し方のトーン(Tone)を取り締まる(Policing)という意味から、「話し方警察」等とも訳される。近年、SNS等ソーシャルメディアの登場により、差別やハラスメントといった社会問題に対し人々が声を上げやすい環境となった。声が上がったことをきっかけに、課題の認知向上や議論の活性化につながる例もある。その一方で、いつの間にか発言者の話し方や態度に注目が移り、議論が脱線した状況に出会ったことはないだろうか。トーンポリシングは、意識的であれ無意識的であれ、発言者の主張内容に関する議論を妨げる効果があるのだ。

トーンポリシングの弊害

トーンポリシングは、具体的には以下のように論点をずらし発言者の主張を退けていく。

  • 問題を提議する発言者の態度を問題視することで、問題をすり替える。
  • 発言者の話し方を「感情的だ」「攻撃的だ」「子どもっぽい・稚拙だ」等と批判することで、相手に緊張を強い、発言することを躊躇させてしまう。
  • 感情表現と共に主張を訴える方法を認めないことで、被害を受けている人が、悲しみ、苦しみ、怒りといった感情や体験を他者と共有する手段を妨げる。
  • 声の上げ方を批判することで、声を上げること自体を止めさせてしまう。
  • 議論の参加者の関心を他に向けることで、本来の論点に戻りにくい状況を作ってしまう。

トーンポリシングはなぜ起きるのか

既得権益を維持するための戦術

トーンポリシングは、マジョリティとマイノリティ、差別をする側と受ける側等、関係性が対等ではない場合に起きやすい。「話し合いは冷静であるべきだ」「合理的であるべきだ」というような議論のあり方を、社会的強者の立場にある人々が決め、同じ枠組みの中で議論することを相手にも求めるのだ。逆に、抑圧された人々が感情と共に訴えようとしたときに、「感情的では建設的な議論にならない」「中立の目線で語るべきだ」と否定することで、会話の主導権を相手から取り戻し、議論を避ける。このように、既得権益を守るための戦術として使われることがある。

リアルな感情と向き合うことの居心地の悪さ

また、必ずしも意図的でなくともトーンポリシングは起こりうる。抑圧された人々のリアルな体験や感情を前に居心地が悪くなり、「気持ちはわかるが落ち着いた方がよい」「もっと柔らかい表現の方がよい」等、相手の主張と正面から向き合うのを避ける場合だ。同じ社会的課題を認識し、相手と対等な関係にある場合も、無意識なトーンポリシングは起こる可能性がある。

このようにして、トーンポリシングは、社会的課題についての議論を避け、課題を内包したままの社会構造を維持する結果につながる恐れがある。

トーンポリシングの事例

  • 2016年に日本で話題になった、「保育園落ちた日本死ね!!!」というブログの投稿。国の方針として少子化対策や女性活躍推進が掲げられたにも関わらず、育児環境が整っていない現状を、怒りの感情と共に指摘する投稿だった。この投稿をきっかけに、同じ問題に悩む人々から声が上がり、待機児童問題が注目を集めた。しかし、「母親なのに言葉使いが汚い」「『死ね』という言葉はないだろう」等、主張内容ではなく表現方法を批判する反応も後を絶たなかった。
  • 2019年9月の国連気候行動サミットで、環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんが、気候変動への危機感と環境対策の必要性を各国のリーダーに対し訴える演説を行った。怒りと涙を伴う彼女の演説に、多くの若者が賛同をした。その一方で、「話し方が攻撃的だ」「子どもが大人に向かって何を言っているんだ」といった論点に直接関係のない批判が見受けられた。

簡単ではないトーンポリシング批判

ネガティブな影響ばかりのように見えるトーンポリシング。その一方で、トーンポリシング批判に対しても様々な意見がある。

  • 言葉の受け取り方は人さまざまだ。相手の口調や言葉が強い場合、どうしても苦痛に感じてしまうのは仕方がないのではないか。
  • 不当な扱いを受けた場合の感情的な表現と、大した理由がないにも関わらず感情的になる人の表現は、分けて扱われるべきではないか。
  • 暴言や中傷は、感情的な表現として認められるものなのか。また、暴言に対する批判は、トーンポリシングに該当してしまうのか。
  • SNS上では、個人に対する集団的な非難・中傷が容易に起こり得る。社会的強者と弱者、トーンポリシングの被害者と加害者は、簡単に入れ替わるのではないか。

まとめ

社会的課題を解決するための議論が行われるには、話し方や表現方法の批評からは、距離を置く必要がある。丁寧で礼儀正しい表現では認知されにくかった社会的課題が、リアルな感情と共に伝えられるからこそ、共感を生み注目を集め、課題解決につながる可能性があるためだ。しかし、自分でも気づかぬうちにトーンポリシングをしてしまうこともあり得る。ソーシャルメディアを通して誰もが声を上げられるようになった今だからこそ、誰もが被害者・加害者になり得ることも、私たちは意識する必要があるだろう。

【参照サイト】トーンポリシングの意味は何か?「保育園落ちた日本死ね」等シチュエーション別に解説(ビジネス+IT)
【参照サイト】言い争いが泥沼に? SNSで激論を呼ぶ「トーン・ポリシング」とは(ダ・ヴィンチ)
【参照サイト】「話し方警察」にだまされるな(北海道新聞)
【参照サイト】No, We Won’t Calm Down – Tone Policing Is Just Another Way to Protect Privilege(Everyday Feminism)
【参照サイト】「日本死ね!」とつぶやいた女性が現在の心境を明かす 「正直、反応の大きさに驚いている」ととまどいも…(産経新聞)
【参照サイト】グレタ・トゥーンベリさん「怒りのスピーチ」を批判するすべての人へ(現代ビジネス)
【参照サイト】グレタ・トゥーンベリさんはなぜ世界を動かしたのか。1年追った監督が見た才能と葛藤(Huffpost)
【参照サイト】Twitterで「罵声はやめてほしい」と訴えると「トーンポリシングだ!」と怒る人たちは正しいか(文春オンライン)




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