ライドシェアリングをより安全に。スイスの研究チームが位置情報の暗号化技術を開発

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AirbnbやUberなどのシェアリングエコノミーサービスが広がるにつれて、より重要性が増しているのが個人のプライバシーの問題だ。個人が自身の資産をシェアすることが基本となるこれらのサービスでは、自宅の住所や自身の位置情報データなどの個人情報をプラットフォーム側に提供する必要があるが、大量に収集されるそれらのデータが常に正しい目的のみに利用される保証はどこにもない。

実際に、UberやLyftに代表されるライドシェアリングサービスは世界中で多くの人々の支持を得ている一方で、膨大なユーザーデータを収集していることから非難の声も聞かれるのが現状だ。少なくとも理論的には顧客の行動をリアルタイムで追跡することが可能となっているためだ。

このシェアリングサービスにおけるプライバシーの問題を解決するべく、このほどスイスの暗号研究チームはライドシェアリング企業がユーザーの位置情報が分からないようにデータを暗号化する技術を開発した。

スイス連邦工科大学ローザンヌ校ローザンヌ大学の暗号研究者チームが開発したのは「ORide」と呼ばれるプロトタイプソフトウェアだ。これにより、人がライドシェアリングのサービスを利用しても位置データを共有することができなくなるという。

カナダのバンクーバーで開催された2017 USENIXセキュリティシンポジウムで発表された論文は、ORideの背後にある暗号について説明する。鍵となるのは、暗号化されている間でさえもデータに対して計算を実行できるようにする「幾分準同型暗号」だ。

その結果、運転手と乗客の間のデジタル通信を暗号化できると同時に、乗車サービス、運転手、乗客との間の暗号化されていない連絡を可能にする。ORideは未だ開発段階ではあるものの、乗車の位置情報に関するデータをライドシェアリング企業から隠すことができる一方、課金などの他の全てのサービスの機能は通常どおり動作するという優れものだ。

ORideシステムはユーザーのアイデンティティを保管し続け、乗客とドライバーが互いに評価しあい、タクシーに忘れた持ち物を取り戻すこともできるが、特定の場所やルートに接続することはできない。

ORideを実装すればピックアップの時間を遅くするなど効率や利便性の面で犠牲も伴うものの、高いプライバシー保護を維持したままライドシェアリングのサービス提供が可能になる。

位置情報といえば、携帯のGPS情報などのビッグデータが東日本大震災の被害の解析にも役に立ち、今後の防災対策にも生かされている。また最近では日本の最高裁が「令状のない警察のGPS捜査」を違法としつつも、重大事件の解決の手がかりになりうることから、「新たな立法措置を講じることが望ましい」と進言した。

進歩する技術をどのように人や社会の役に立てるのか、多方面での継続した議論が求められるが、シェアリングエコノミーという新たな経済パラダイムのなかで個人がより安心してサービスを提供し、利用できるようになるために、プライバシーの問題は必ず克服するべき課題であることは間違いない。

【参照サイト】ORide: A Privacy-Preserving yet Accountable Ride-Hailing Service

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