「これは何だろう?美しい。見てみたい。」が、Shi-Anを写真で初めて見たときの感想だった。
Shi-An。東京の2つの建築事務所Katagiri Architecture+DesignとAkinori Inuzuka Designの作品で、和紙の折り紙のみでつくられた世界中に移動可能な茶室である。
この写真は、世界遺産である二条城の台所に設置したときのものだ。二条城の四角い木組みとShi-An の温かな丸み、内部のほのかな灯り、壁・床に敷き詰められた石・Shi-Anのわずかに異なる3つの白色が美しい調和をなしている。
Shi-Anは、500ミリx1000ミリの和紙を8折して作った折り紙のピースを、接着剤等を一切使わず互いに差し込みながらつみ上げてつくる。空間を支える柱・梁などの骨組みは一切ない。紙のつみ方は自由で無限に開かれており、最終的な形態やサイズは空間の用途によって自由に変えることができる。設置・解体も容易だという。
Katagiri Architecture+Designの片桐氏はこう語る。「4000枚の折り紙を織り上げてつくられた小さな茶室は、日本の伝統文化としての茶室=そぎ落としの美を空間化したものであり、またそれは細胞分裂を繰り返す生命体のようでもある。」
現在、世界中で注目されている折り紙。西欧では最近、店頭で普通に折り紙を購入できることも珍しくなくなってきた。この世界で愛されている日本の伝統芸術である折り紙で、日本の伝統文化である茶室を世界中のどこにでもつくるというShi-Anは特別だ。そのシンプルさ、折り紙の全ての線が織りなす模様。内部の温かな空間を包み込む丸い形は、生命を紡ぐ蚕のようにも見える。
Shi-Anは、これまでに世界中で多くの受賞歴がある。Taipei International Design Award、京都デザイン賞大賞、WAN Small Spaces Award 2016入選、DSA日本空間デザイン賞金賞、JID Award 2017のプロダクト部門賞。また、2016年には世界3都市で開催されている現代アート展覧会であるArt Basel において、香港でShi-Anが展示された。
さらに、Katagiri Architecture+DesignKatagiriのホームページでは、Shi-Anと同様に折り紙を使った多様な組み方が紹介されている。この折り紙を使った空間のつくり方、空間の仕切り方は、これからのオフィスやカフェ、様々な場面で適用できそうだ。
日本の伝統文化である折り紙と現代のニーズ。この2つを融合させれば、温かみのある、世界で1つだけの空間ができるだろう。可能性は無限大だ。
和紙の折り紙のみでつくられた世界中に移動可能な茶室「Shi-An」。実際に、目と心で見て、その空間を感じてみたい。
【参照サイト】Katagiri Architecture+Design
(※画像:Katagiri Architecture+Designより引用)