病院は緊急の処置を必要とする患者に対して常に迅速な対応が求められる。ある施設が特定の血液型など別の病院で必要とする医療サンプルを有する場合、病院間で速やかな輸送が行われなければならない。しかし病院が都市の中心部に位置している場合、交通渋滞で大幅に遅延することもある。
このプロセスをより迅速にするために、スイスの病院は米国シリコンバレーのテクノロジー企業Matternetの協力を得てドローン配送ネットワークを構築した。
このネットワークのドローンは病院間で医療用品を配送し、通常の配送車が苦闘する交通渋滞を回避することができる。スイス初となるこれらのドローンのテストが、今年3月に南部のルガーノで行われた。
医療関係者はモバイルアプリを介してリクエストを出し、ドローンシステムを使用して近隣の病院にサンプルを送ることができる。リクエストが承認される間、サンプルは専用の保護ボックスに納められる。QRコードがスキャンされて添付されると、医療従事者はドローンのプラットフォームにコンテナを固定する。あとの作業はクラウドシステムが引き継ぐ。
ドローンが病院に到着すると通知され、必要な場所にサンプルが届けられる。ドローンは着陸すると自動で新しいバッテリーを装填するため、輸送中に電池切れで墜落することもない。このドローンシステムにより、車両での配送が25分かかるところを3分で完了することができるため、多くの人命が救われる可能性がある。
Matternetは、このシステムで使用されている全てのドローンを製造した。同社はまた、ドローンにプログラムされたクラウドシステムも開発し、ドローンが自律飛行で配送し供給品を落とすことを可能にした。また、スイスの病院はシステム管理の支援に関してスイスの郵便サービスとも提携している。山岳地帯が多いスイスでは、地形に関係なく空から直線的に物品を届けることができるメリットは大きい。
Matternetは初めて完成されたドローンステーションを9月20日に発表した。今年末までに新たなステーションを展開する予定だ。
アマゾンなどEコマース大手や運送事業者が、革新的な配送方法として研究を進めているドローン。技術の進歩のおかげで商品がいち早く届くようになるのは消費者としては喜ばしいことだが、ドローンが持つ価値は顧客サービスの向上だけにとどまらない。医療の現場では、ドローンがあれば配送時間の短縮により今までは助からなかったかもしれない人命を救うことができるのだ。最先端のテクノロジーを活用して社会課題を解決する優れた事例だと言える。
【参照サイト】Matternet Unveils the Matternet Station
【参照サイト】Matternet
(※画像:Matternetより引用)