The Starry Night(星月夜)は、ゴッホがフランスの精神病院で療養していたときに描いた作品だ。ゴッホはこれを描いた翌年の1890年に亡くなっている。まさに晩年の作品だ。彼はこう語ったらしい。「星は私を夢へと誘う。電車に乗って目的地に行くように、私達は死んで星となる」
そんな幻想的で哀しくもある作品をテーマに、オランダのヌエネンにVan Gogh Pathという光る自転車道ができた。ゴッホはオランダ出身の画家で、ヌエネンは彼が一時期住んでいたゆかりの地。その地に、オランダのアーティストかつイノベーターでもあるDaan Roosegaardeは、過去と未来を融合させたサステナブルな自転車道を作ったのだ。
この自転車道のどこがサステナブルなのか。Van Gogh Pathは星を連想させる数千もの煌く石からできているが、この石は日中の太陽光で充電し、夜になると発光する蛍光塗料を塗られた特別な石だ。そのため、道を光らせるのに余計な電力を使う必要がなく環境に優しい。夜道を足元から照らしてくれるので、夜のサイクリストも安全に走行できる。そしてロマンもある。
オランダの風景にイノベーションを起こしたいと考えるDaan Roosegaardeの取り組みは、この自転車道だけにはとどまらない。同じく発光する塗料を使った自動車用道路Smart Highwayや人の動きに合わせて光を発するオブジェクトMarblesなど、ライトを取り入れた作品を数多く制作している。
ところで、The Starry Nightの絵に描かれた雲のような大きな渦はVan Gogh Pathでも表現されているが、この渦は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」からインスピレーションを受けたという説もある。確かにゴッホが浮世絵をはじめとする日本美術に強い影響を受けていたことはよく知られている。私たち日本人が、Van Gogh Pathに北斎の面影を見ることもできるかもしれない。
【参照サイト】Van Gogh Path
【参照サイト】Vincent van Gogh “The Starry Night”