美術館に展示されている作品はどうやって集められているのだろうか。巨額の資金で買い集めてきている場合もあれば、もとから王室の持ち物だった場合もある。芸術の都と謳われた地であれば、周辺地域から芸術家が集まり、自然と作品が集まってきたこともあった。そして忘れてはならないのが、「植民地から持ち帰ってくる」というパターンだ。この方法は略奪とも呼ばれ、ヨーロッパの美術館に行くと植民地時代の痕跡を残す作品を見ることができる。
先月、アフリカ西部の独立国であるブルキナファソを訪れたフランスのエマニュエル・マクロン大統領が、フランスが所有するアフリカの遺産を5年以内に返還することを優先課題とする、と大学で行ったスピーチで宣言した。800人あまりの学生がスピーチに耳を傾けるなか、マクロン大統領はヨーロッパとアフリカ間の文化交流および人材交流に対する希望を語った。以下がマクロン大統領の発言だ。
「アフリカ諸国の文化遺産の多くがフランスにあるという事実は不本意に思う。この状況に歴史的な説明はつくが、十分な正当性はない。アフリカの遺産はヨーロッパの個人コレクションや美術館にだけ置かれるべきではない。これらのものはフランスだけではなく、ダカールやラゴス、コトヌーでも注目を集めるべきだ。」
またマクロン大統領はツイッターで、「アフリカの遺産は、ヨーロッパの美術館の捕虜であってはいけない」とも発言している。具体的にどの作品のことを話しているのか、また具体的にどういうプランで返還していくのかは定かではないものの、一国の大統領がこうした強い意向を示したことに対して、会場からは熱烈な拍手が沸き起こった。
文化財の返還問題は世界中のあらゆる国の間で議論になっている。エスニックジョークのような話だが、アメリカに「オリジナル作品の価値を尊重して、おたくの国の違法コピーを取り締まってほしい」と言われた中国が「そっちのメトロポリタン美術館こそ、私たちのオリジナルの作品を返してほしい」と言い返したとか。こういう上手な切り返しの鍛錬は日頃から積んでおきたいものだ。
【参照サイト】Will French Museums Return African Objects? Emmanuel Macron Says Restitution Is a ‘Priority’