総数、人口比共に世界最高水準の受刑者を抱えるアメリカ。同国では、警察が薬物犯罪で年間約150万人を逮捕しており、そのうち80%が所持によるものだ。刑務所人口を減らす処置として、常に1つの解決策が浮かび上がる。薬物関連の刑罰を軽くし、投獄者が減った分の予算を、リハビリプログラムや精神衛生支援にあてる案である。
しかし、各州により法律が異なるため、薬物の刑罰軽減は、必ずしも受刑者を減らすことにはならない。たとえば、麻薬使用の刑罰を50%低減したとする。薬物の使用に厳格なアリゾナ州では、これにより刑務所人口は11.7%減少するが、カリフォルニア州ではわずか1.5%減るだけに留まる。
州単位で刑務所人口を減らすだめの政策立案を理解すべく、米シンクタンクのUrban Instituteは、異なる政策が各州の刑務所人口にどのように影響するかをモデル化したデジタルツール「Prison Population Forecaster」をリリースした。
この刑務所人口計測ツールでは、「どこの州で」「何の犯罪で」「どれくらいの重さの刑罰(刑期)を科すか」を操作し、それによる犯罪の増減をグラフで示してくれる。
このプロジェクトの主任研究員であるブライス・ピーターソン氏は、ツールの制作のために全国各地の公的に利用可能なデータを集積した。ピーターソン氏によると、アメリカ全土で刑務所人口を最も減少させるためには、暴力犯罪の刑期を短縮することが重要だという。「入所者を減らしたい、抑えたいと思うなら、主な方法は暴力犯罪の刑期を見直すことだ。」と同氏は言う。
Prison Population Forecaster自体は集積したデータに基づき、異なる政策がどのような結果を招くかを事前に算出するツールだ。そのデータにのみに依存して各州の政策を決定することには限界がある。アメリカ自由人権協会の報告書では、同ツールを人道的な司法制度に沿って使用するようにと指南されている。
アメリカのなかでも、ルイジアナ州は誤審が多く報告されている。オレゴン州では、州人口のわずか1.9%であるアフリカ系住民が受刑者の9.1%を占めており、人種間の対立も根強い。各州で人々の生活も犯罪の状況もまったく異なるからこそ、犯罪に関してもそれに合った対策をたてることが必要なのだ。
これらのデータから導き出される数値は、警察による過剰な逮捕を抑止し、公平性を高める効果もあるという。今後どのように使われていくのかが楽しみだ。
【参照サイト】Prison Population Forecaster