美味しそうな食べ物の写真を見るとついつい笑顔になってしまうのは、万国共通だ。そんな、国や人種を超えた力をもつ食事の写真をSNSに投稿するだけで、見ず知らずの子どもたちの人生が変わるとしたら、こんな簡単で素敵なことはないのではないか。
特定非営利活動法人TABLE FOR TWO International(以下、TFT)がはじめた「おにぎりアクション2018」は、まさにそんな企画だ。
「おにぎりアクション2018」とは、#OnigiriActionというハッシュタグをつけて日本のソウルフードであるおにぎりの写真をSNSまたはTFT特設サイトに投稿すると、協賛企業からアフリカやアジアの給食5食分に相当する100円が寄付されるキャンペーンである。2015年から毎年1ヶ月半開催され、今年は10月10日から11月20日までがキャンペーン期間だ。
「二人のための食卓」とは?
TFTは、食の不均衡の問題を解決したいという思いで創設された団体で、対象となる定食や食品を購入するとそのうちの20円がアフリカやアジアの1食分の学校給食として寄付される仕組みを作った。この20円というのは開発途上国の給食1食分の金額である。世界14か国で活動し、日本では750社以上と協力しながら、アフリカ、アジアの6か国にこれまで6300万食を提供している。つまり、TABLE FOR TWO(二人のための食卓)とは、先進国の私たちと開発途上国の子どもたちが食事を分かち合うというコンセプトである。
学校給食にこだわる理由はなんだろうか。それは、栄養状態の改善だけではなく、就学率、出席率、学力の向上を含む教育機会の提供にもつながるからだ。
たとえば、2010年からルワンダのバンダ村で雑穀と大豆粉末で作ったおかゆを毎日提供し続けたことで、村のすべての子どもが学校に通えるようになった。さらに2018年には村で初めての大学進学者も出て、「給食のおかげで人生が変わった」と言ってくれたという。それはなにも大げさなことではなく、彼、彼女のリアルな声だ。
このようにTFTは、多くの企業や団体、個人と協力して、さまざまなキャンペーンを生み出している。そのひとつが、「おにぎりアクション」だ。
「幸せの連鎖」を生む、#OnigiriAction
お弁当やピクニックに欠かせなく、今やコンビニでも気軽に買うことができる「おにぎり」。なぜ「おにぎり」に注目したのだろうか。
「おにぎりは大切な人に愛を込めて握る機会が多い食べ物で、その周りには温かいエピソードが多いから」と、本企画担当者の大宮千絵さん。家族や身近な仲間への想いに加え、アフリカやアジアの子どもたちへの愛も込めたら、あなたのおにぎりから幸せを感じてくれる人がもっともっと増える。そんな「幸せの連鎖」を気軽に生むことができる活動だ。
実際、#OnigiriActionというハッシュタグムーブメントがじわじわと広がり、投稿したり「いいね!」ボタンを押したりすることで、お互いを応援しあい楽しみを共有する一種の巨大なコミュニティとまでなっているという。これまでに100万人がこのキャンペーンに参加し、累計200万食の給食を届けている。協賛企業も海外を含め40社近くにのぼるという。
「写真を投稿するという小さな一歩が、世界を変える力になると信じています」と大宮さんは力強く語った。
おにぎりアクションは、アジアの優れたマーケティング活動を表彰する『アジア・マーケティング・エクセレンス賞』を2017年、日本の団体として初めて受賞した。現代マーケティングの父として知られる経営学者フィリップ・コトラー教授も、「マーケティングをうまく活用した世の中を良くする企画だ」とコメントしている。
「開発途上国の貧困という私たちの日常から少し遠い話を、どうしたら自分ゴトとして考えてもらえるのか」という問いから生み出された、この「おにぎりアクション」。その狙いは当たり、おにぎりというアイテムが身近でわかりやすく、SNSで共有したくなる企画であるため、インスタグラマーやブロガーの方も自然に参加し、ここまでの大きなコミュニティに育ってきた。
「Marketing for Good」の裏にある熱い想い
協賛企業は、日産自動車、イオン、オイシックス・ラ・大地、西友、FiNC、味の素冷凍食品、日本航空、福井県など、分野を問わず40を超えている。
これら協賛している企業や地方自治体は、先方から声をかけてきてくれたり、TFTスタッフの方の知人や前職、出身地のつながりから、これだけの輪を作り上げてきたそう。
おにぎり関連商品の売上が向上するなど企業のマーケティングとしてはもちろんだが、デジタル時代の新しいCSR(企業の社会的責任)の形としても、面白い企画になっている。
編集後記
「おにぎりアクション」は、世の中を良くするためにマーケティングやSNSをうまく活用した、まさに「Marketing for Good」なプロジェクトだ。マーケティング大賞を受賞するくらい、マーケティングのヒントがたくさん詰まった企画である。
しかしその裏にある、スタッフの方々の、この企画を「もっともっと広げたい」という努力や熱い想いなしには、ここまで成長することはなかっただろう。マーケティング力が素晴らしいのは言うまでもないが、美味しそうな食べ物の写真をシェアする楽しみや、困っている人のために何かしたいという人間の普遍的な気持ちを喚起させてくれる、自然と応援したくなる企画である。
プロジェクトの詳細は下記のとおりなので、一枚でも投稿してみなさんの幸せを「おすそ分け」してみてはいかがだろうか?
詳細:おにぎりアクション(URL: https://onigiri-action.com/)