4月15日、フランス、パリの観光名所であるノートルダム大聖堂で大規模な火災が発生した。尖塔が焼け落ちる映像に、衝撃を受けた人も多いのではないだろうか。鎮火後、フランス政府はノートルダム大聖堂の一部再建のため国際コンペを発表し、世界各地から修繕の建築アイデアが集まっている。
そのうちの一つ、パリの建築事務所Studio NABが考えた「焼け落ちた屋根と尖塔部分をガラス張りにして、温室(グリーンハウス)と養蜂場を設ける」というアイデアを今回は紹介したい。
Studio NABは、現代建築を「社会課題に耳を傾け、よりよい未来のためにつくるもの」だと捉えている。今回のプランでは、フランスという国や、教会で大切にされている価値観(設計に敬意を表す・生物多様性を再構築する・良心を教育する・社会と結びつく)を、ノートルダム大聖堂を通じて表現することを提案しているという。
温室では、都市農業や園芸、パーマカルチャーなどのワークショップを行うことで、子どもが自然について学べるだけでなく、生活困窮者などが学びを得て新たな仕事を生み出したり、仕事に就いたりすることができると考えている。
また、養蜂場については、以前から大聖堂で飼育されていた約20万匹のミツバチが火事で生き残ったことからインスピレーションを受けたという。ハチミツを販売できる規模でハチを育てる計画で、養蜂家の協力のもと、生活困窮者が職業訓練する場づくりをするなどの構想が練られている。
Studio NABが提案する大聖堂は、訪れた人々に都市農園やパーマカルチャーの可能性、生物多様性のあり方を見せる場となるだろう。
産経新聞によると、世論調査では国際コンペに反対し、「火災前の姿の忠実な復元」を求める声が54%を占めたという。しかし今まで大聖堂が積み重ねてきた歴史と、今これから向き合っていくべき未来、どちらも考える必要があるのではないか。Studio NABのアイデアは、建築物修繕のこれまでにないスタイルを提示している。
【参照サイト】Studio NAB – Notre Dame de Paris
【参照サイト】エコ聖堂、光の塔…ノートルダム再建に斬新案が続々 論争が過熱
(※写真提供:Studio NAB)