世界経済フォーラムが2018年末に発表したジェンダーギャップ指数の日本の順位は144ヶ国中110位、G7では最下位という結果となった。この指数は「教育」「健康」「政治」「経済(働き方)」の4つの分野が評価対象となり、日本はそのうち「政治(125位)」と「経済(117位)」で低い評価を受けた。実際、賃金格差や、重要な意思決定の場に女性が少ないことなどが問題視されている。
ジェンダーの格差は、女性だけの問題ではない。世界価値観調査(2010年)を見てみると、日本では男性よりも女性の方が幸福度は高く、その差は世界で一番だという。男性も女性も性別を理由に不当な扱いを受けないようにするには、どうしたらいいのか。
今回は、IDEAS FOR GOODがこれまで取り上げた、男女格差の問題にアプローチする世界のアイデアを5つ紹介したい。
働く場から男女格差を改善する
内閣府の男女共同参画白書の調査(2014年)によると、女性の場合、主婦や自営業者は幸せと感じる割合が高いが、正規雇用者になると低くなる。一方、男性の場合は幸せと感じる割合は総じて女性より低いが、正規雇用者のみが女性よりも幸せと感じる割合が高い。
ここからは、女性は働く上で賃金格差、産休・育休、さまざまなハラスメントなどキャリアアップの障害などに悩まされることが多く、男性は「男は正規雇用でしっかり働き、稼ぐべき」という考えに縛られ、そうでなければ幸福度が低くなってしまう傾向にあることが読み取れる。
職場でも存在する、性の格差を是正するアイデアは次の通りだ。
01. 男女の賃金格差を法律で禁止する
2018年のジェンダーギャップ指数による男女平等ランキング1位のアイスランドで、2017年1月1日から「性別による賃金格差を禁止する」法律が施行された。この法律は、25名以上従業員がいる団体に対して男女ともに同一賃金が支払われているという証明書の提出を義務付けるもの。証明できない会社は罰金を支払うという。政府がこの課題に本気で取り組み、格差を法律によって禁じる方法だ。
02. ジェンダーの偏見を可視化するアプリ「Gender EQ」
スウェーデンのデザイン会社が、音声認識に基づき会議で男性と女性がそれぞれ話した時間の割合を測り、ジェンダーバイアスをグラフ化するアプリ「Gender EQ」を開発した。これは、よく話す女性役員の評価が男性と比べて14%低くなる一方で、おしゃべりな男性役員は10%高く評価されるという調査に基づいている。
職場における格差をなくすためには、まず「無意識な偏見」の存在を知ってもらうことが大事だ。偏見を見える化することで、男女格差について考えるきっかけを得られるかもしれない。
03. 企業が「男女同権」かどうかを計測する投資家向けツ―ル
アメリカのNPO団体As You Sowは、4000社のジェンダーへの取り組みについて集めたデータを活用し、男女同権の度合いを数値化するツール「Gender Equality Funds」を開発した。たとえば役員に女性がいるかどうか、セクハラ規定があるかどうか、同じ仕事に同等の給与を支払っているかどうかなどがわかるようになるという。投資先の企業を選ぶ新たな基準が生まれたことで、企業側もこれらの課題に着目・改善する流れに期待したい。
日常生活で性のステレオタイプを与えないように
普段の生活でも、街で見かけるものによって無意識に性のステレオタイプが刷り込まれていることがある。ここからは、日常生活における男女格差改善のアイデアを紹介する。
04. 英国、ジェンダー偏見を生む広告表現を規制へ
イギリス国内すべての広告が広告コードに則っているかを監視するASA(英国広告基準局)と、広告コードを作成するCAP(広告実践委員会)は、ジェンダーに関するステレオタイプ表現を使わなくて済むようにガイドラインを発表した。
たとえば「車を停められない女性のための~」「おむつを替えられないパパにも安心」など、ある作業ができない理由を性別のせいにする表現は避ける必要があるという。人の心を動かす広告は、人の行動や選択を性によって縛るのではなく、誰もが自分らしく生きられる社会の実現に寄与する。
05. 男性トイレにもおむつ交換台の設置を義務化
アメリカ、ニューヨーク州は2019年1月、これから建設される建物・施設すべての男性トイレに最低1台のおむつ交換台設置を義務付ける法律を施行した。女性トイレにしかおむつ交換台がないのは、育児をするのは女性という意識に基づいている。男性トイレにもおむつ交換台の設置を義務化することで、そういった性別による役割意識を取り払おうとするアイディアだ。
今回のケースのように、性によって役割が決められない社会のシステムは、多様な人が生きる時代において注目されるだろう。
まとめ
職場での男女差別や、無意識に持っている「こうでなければいけない」といったイメージによって生きづらさを感じる人がいるなど、いまだに社会には課題は多い。社会や文化が作り出した性差「ジェンダー」は、男女ともに考えるべき問題だろう。
いま、性別や年齢などでカテゴライズするのではなく、“人”としての選択を尊重できる社会が求められている。そして、そのような社会の実現のためには、一人ひとりがジェンダーに関する知識や興味を持つと同時に、まだそれを「知らない」「興味がない」人へも浸透させていかなければならない。
今回紹介した世界のアイデアは一部だが、制度や慣習、意識などさまざまな角度から男女格差の問題を考えるきっかけになることを願う。
【参照サイト】内閣府男女共同参画白書の調査
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