先日、スコットランドのサーモン養殖加工販売会社が参加するプロジェクトが、サーモン加工の過程で切り落とされる部位(廃棄物)をバイオガスに変える技術で、このたび持続可能な開発を行う団体に贈られる「VIBESパートナーシップ・スコットランド賞」を受賞した。
このプロジェクトの名前は、アウター・ヘブリディーズ・ローカル・エネルギー・ハブ(OHLEH)プロジェクト。サーモン養殖加工販売会社The Scottish Salmon Company(SSC)と、クリーンエネルギー提供会社Pure Energy Centre (PEC)、 再生可能エネルギープロジェクト開発を支援する国家慈善団体であるCommunity Energy Scotland and Comhairle nan Eilean Siar(CnES)の3団体が参加した。
地域での循環エネルギーと、経済創出に焦点を当てた本プロジェクトは以下の2ステップで機能する。
- サーモンの廃棄物がSSCの処理工場からCnESの家庭廃棄物リサイクルセンターの嫌気性消化槽(有機物をメタンや二酸化炭素に分解する槽)に送られる
- そこで廃棄物はバイオガスに分解されて、熱電併給プラントのエネルギーとして使用される
バイオガスの一部は、電解槽(電気分解を行う容器)に電力を供給するためにも使われる。この電解槽はSSCの孵化場で使用される水素と酸素をつくりだし、CnESの大型水素トラックに燃料を供給するという循環システムになっている。
当プロジェクトは、スコットランド政府の地方エネルギーチャレンジ基金から資金提供を受け、廃棄物管理とエネルギーの課題に対する共同ソリューションを奨励するイニシアチブに発展した。
CnESのサービス部長のデイビッド・マックレオド氏は、「これは、循環経済プロジェクト実現を目指すパートナーによる素晴らしい成果だ。今回の受賞は、持続可能な水素経済の構築がアウター・ヘブリディーズ(イギリス西部の諸島)で可能だということを示している。」と述べている。
「人類が直面している環境問題は大きく、すぐに行動を起こさなくてはならない。今後成功するのは、コンプライアンスだけでなく、低炭素・低廃棄物であり、環境にやさしいことをチャンスをみなすビジネスだ。環境負荷の低減に向けて重要な措置をとることがどれほど収益アップに役立つかを理解している企業の多様な試みを見るのは、とても励みになる。」とVIBES審査委員会の委員長であるボブ・ダウンズ氏。
サーモンの廃棄物を利用して地方循環エネルギー経済をつくりだす、スコットランドの共同プロジェクト。海の幸に恵まれた日本でも大いに参考になりそうな試みだ。
【参照サイト】Outer Hebrides Local Energy Hub project scoops top environmental award.